閑話 昴の休日2

 午後、それは日差しが最も強い時間。

 紫外線の天国である。


「というわけで、日焼け止めを塗ってアームカバーをするか、日焼け止めも塗るか選んでください」

 開口一番、ミナがボクに2つの選択肢を提示した。

 

 1つ目はアームカバー。

 紫外線から肌を守る効果があるかは不明だけど、一定の効果はあるようだ。

 日焼け対策に良く装着されている。


 2つ目はUVカットの日焼け止め。

 言わずと知れた夏のお供の1つ。

 

 前者は日焼け止めも追加で使う。

 後者は日焼け止めのみだ。

 ボクとしてはどっちでも構わないわけで、暑くなければいい。


「じゃあ、日焼け止めのみで」

 ボクは早速暑くなさそうな方を選択した。

 当たり前だ。

 これ以上装備品を増やしてたまるか!!


「はい、じゃあアームカバーと日焼け止めに決定。日傘も追加で」

 ボクの選択などもはや聞かれてすらいなかった。

 最初から答え決まってたんじゃないか!


「それ、選択肢与えられた意味ないんじゃない?」

 ボクはとりあえず抗議する。

 結果は分かり切ってるとしてもだ。


「日焼け止め『も』としか言ってないよ? お姉ちゃん」

「!?」

 前者は日焼け止めを塗ってアームカバーをするかだが、後者は日焼け止め『も』塗るかとしか聞かれていない。

 これは、間違いない。


「答えありきのひっかけ……」

「正解。どっちにしても日焼けなんてさせません。そうは言いつつも、今回はサマーワンピースを着てもらうので、一部は日焼けしてしまうかもしれないけど。それでも、完全露出する腕よりはマシです」

 そう言うと、さっそくボクは抵抗も許されずなすがままに脱がされるのだった。



☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★



「お姉ちゃん、少しは抵抗してもいいんじゃない?」

 一緒に外を歩いていると、ミナが小首を傾げながらそう聞いてきた。


「抵抗しても無意味だって、前回で理解したよ……。いくら抵抗してもすぽんと脱がされたじゃないか」

 何回か抵抗を試みたことはある。

 さすがに無抵抗で脱がされたりはしないからね。

 でも、不思議なことにいくら抵抗しても力負けしてしまうんだ。

 なんでだろう?


「お姉ちゃん、性別決まる前も非力だったけど、性別決まっても変わらず非力だよね? 天狐ってそういうものなの?」

 ミナはとんでもないことを聞いてくる。

 ボクが非力だなんてありえない!

 ゲームの中ではすごく強いんだぞ!


「ゲームの中では強『それはゲームの中だからでしょ?』うぅ……、はい」

 ゲームと現実をごっちゃにしてはいけないと、なぜかボクが怒られる羽目になってしまった。

 ボク、一応姉なんだけど……。


「少しは強くならないと、体育とかつらいよ? 夕方とか一緒に少し鍛えようよ」

 どうやらミナの中ではボクの予定がすでに決まっているようだ。


「でも、妖種なのに何で非力なんだろう?」

 こればかりはボクにはさっぱりだ。

 お婆ちゃんを見る限りそんなことはない。

 まさか、ボクだけ?


「向こうでお婆ちゃんに会えたって言うなら、お婆ちゃんに聞いてみなよ。私まだ会えてないから早く会いたいなぁ」

 ゲームに入る時間はちょいちょいとあるのだが、その時ちょうど都合悪く、お婆ちゃんが召喚に応じてくれないのだ。

 お婆ちゃんは結構忙しい人みたいだから仕方ないのかもしれない。

 まぁ、今度聞いてみるかぁ。


「そういえばお姉ちゃん。胸ちょっと育った?」

 ミナがボクの胸元を見ながらそう言ってきた。

 あんなに大平原だったのに、そんなわけないじゃないか。


「気のせいだよ。この身体になってまだ10日程度だよ?」

 現在は8月11日だ。

 だいぶいい時期になってきてしまった。

 もうすぐ夏休みも終わってしまうなぁ……。


「ならちょっと確かめてみればいいじゃない」

 ミナはそう言うと、ボクの胸を指先でつっつく。


「ひゃうっ!?」

 突然の感覚にびっくりした。


「うんうん、ちょっとずつ成長してるね。来月くらいには丘くらいになるんじゃない?」

 マイボディードクター、ミナはそう診断した。

 ボクへの謝罪は一切なしである。


「ミ~ナ~? 一声かけてくれてもいいよねぇ?」

 さすがのボクもちょっとは怒る。


「あはは……。ごめんなさい。ほら、私のも触っていいからさ?」

 ミナが早速胸を突き出してくる。

 でもその光景はあまりにも危ないからダメだ。


「触らないよ! まったく」

 さすがに妹のをチェックするわけにはいかないので、お断りしておく。

 色々と問題があるからね。


「あっ、着いたよ。ショッピングモールの水着売り場」

 ミナが指さした先、そこには以前やって来たショッピングモールがあった。


「さぁ、いくよ! お姉ちゃんに似合う水着を選ぶんだからね!!」

 ミナは張り切っている。

 なんでそんなにボクを重視するのか……。


「ねぇ、ミナ」

「うん?」

 ボクが呼びかけると、ミナが振り向く。


「なんでそんなにボクをことを面倒見るの?」

 ボクがそう問いかけると、ミナは笑いながら――。


「そんなの当たり前じゃない。大切な大好きなお姉ちゃんのためだから、女の子の先輩として世話を焼くんだよ」

 ミナはやんわり微笑んでそう言い切った。

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