第32話 希少種族とそれ以外の種族
お風呂から上がったボクは、コノハちゃんと交代した。
「それじゃ行ってきます。現実でもお風呂入りたくなる」
コノハちゃんはお風呂がかなり好きなようだ。
現実の方は知らないけど、きっと長風呂なんだろう。
「ねぇ、マーサさん」
ボクは近くで座っていたマーサさんに声を掛ける。
「希少種族って、実際どうなの? 人数居るの? 強いの? 希少種族以外の人は弱いの?」
ボクの疑問は希少種族って何が出来るのかということだけだ。
「そうさねぇ。特定条件でのみ強くなるとという感じかねぇ。希少種族は他よりちょっと強いくらいというのが現状だと考えていいよ。無双したいというならハイオークが一番だろうねぇ。彼らは知能も高ければ力も強い。まさに戦うためだけに生まれてきたような剛力の戦士団さ。異世界人でハイオークに進化したいなら、ハイオークを解放しなきゃいけない。それに、希少種族というのはそもそも人数が少ないし能力に制限がかかってるんだ。純粋な人間種も希少種族は存在するんだよ。エンシェントヒューマンという古代種だね。条件を満たせば進化出来るそうだが……」
この世界の希少種族は本当の意味で希少だった。
まず、数が少ない。
そして、強いことは強いが、能力は制限されている。
人間種の希少種はエンシェントヒューマンという種らしい。
まぁ確かに、天狐種も数は少ない。
さらに言えば一番強いのはココノツお婆ちゃんであり、ボクはちょっと人より強かった程度だ。
ただし、夜に限る。
「ふぅん。希少種族って何が良いんだろう?」
希少種族の利点は他にない見た目とか能力ということになるんだろうか?
他にはないのかな。
「う~ん。一部特殊な職業がある。固有スキルがある。種によっては見た目が良い。希少種族は希少種族の里で自由に過ごせる。くらいかねぇ。正直、人間種のほうが多岐に渡る職業につけ、様々な能力を獲得できる。そう考えると、異世界人は人間種のほうが最強とやらになれるんじゃないかねぇ?」
希少種族って案外名ばかりなのかもしれない……。
ちょっとがっかり。
「だけど、里での修行次第では大きく化けるとは聞いてるからねぇ。本当かどうかはわからないけども」
修行かぁ。
絶対時間かかるやつだよね……。
妖狐族の里の場所はボクは知っているし、天狐種の里もボクは知っている。
あとは修行次第ということになるわけだけど……。
「結構シビアなんですね。ボクに出来ることあるのかな?」
月の元でもないと、ボクはそんなに強くはなれない。
太陽の元では一般冒険者ちょいよわ程度の戦闘力しかないだろう。
「まぁ修行は大事さね。ただのんびりしてる人が突然最強の存在になったりすることはありえないってもんさ」
マーサさんの言うことはもっともかもしれない。
うん、15になってから頑張ってみよう。
「人間種って、進化が多様なんだね。ボクのは1つしか進化先がないよ」
人間種から天狐種への進化、それがボクに与えられた進化先だった。
「ただいま」
これからのことを考えていると、コノハちゃんが戻ってきた。
どうやら温まってきたようだ。
身体から湯気が立ち上っている。
「どうしたの? スピカちゃん」
コノハちゃんがボクにそう聞いてくるので、先ほどまで話していたことをコノハちゃんにも話した。
「そうなんですか? 私はまだ進化できないから……。15からは選べるとは出てるけど。それで、思ったんですけど、私の進化先の1つに『獣人族山猫種』ってのがあるんです。弓や投擲とか、狩りに強いスキル構成が特徴みたいです」
そう話すコノハちゃんの目は、わずかにキラキラしていた。
コノハちゃんって弓好きだよね?
「山猫種ってのは狩猟に特化した種さね。素早さや命中に補正があって隠密も得意。獣人族の希少種と言われてる種さ。良いものが出ているじゃないか」
マーサさんはやや驚きながらそう告げた。
どうやらコノハちゃんにも特殊な適性が存在したらしい。
「決まりです」
コノハちゃんは嬉しそうにピョンピョン跳ねながらそう言った。
「ふふ、そうだね。あとはステータスにポイントを振れるようにするために、要塞解放かぁ」
今冒険者全体の目標は、まずはステータスにポイントを振れるようにするために、技術の要塞を攻め落とすことだ。
これにより、現在ほとんど見えないステータスの項目が完全開放されるらしい。
つまり、ステータス表記が変わるということだ。
それと、クランシステムの開放を目指した、絆の要塞攻めもある。
クラン同士の争いが起きそうだなぁ……。
あと、個人目標は15を超えること。
これはお婆ちゃんとの約束だった。
「ということで、一度落ちたら勉強してくるから、終わったらまたやれたらやろうね」
ボクはまだ夕方であることを思い出し、本日のノルマを達成するために落ちることを決意した。
「うん、私も宿題の続きしなきゃ。怒られたら一緒に遊べない」
コノハちゃんはそう言うと、さっそくログアウトの準備を始める。
「では、ご主人様がお戻りになられるまでお店のお手伝いをしておきます。ご主人様のお体の管理はお任せください」
ミアはそう言うと、ペコリと頭を下げてからマーサさん達の元へと向かって行った。
「それじゃ、いこ」
「うん」
そうして、ボク達は揃ってログアウトするのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます