いつになく


 その日、王城に帰ってアーレア王子のサロンで昼食をとり、午後は国王と王妃の前で〈御進講〉と呼ばれる御前講義を行ない、講義後の懇談で『そろそろ王太子教育に本気で取り掛かりたいのですが王子が勉強机に座ってくれません御宅の家庭教育はいかがなものか』という愚痴をすんでのところで呑みこみつつ御前から退出したあと、懐中時計を確かめたルキウスはアーレア王子のサロンに戻らず反対方向に足を向けた。今ごろアーレア王子はパステルカラーのおやつに埋もれている時間帯だ。

「ソルティスのところに行くの?」

 心臓が止まるかと思った。

 ふりかえってルキウスは眉をひそめる。

「そうです。どうしても納得できません。直接お話を伺いにいきます」

 廊下の真ん中で白ウサギのぬいぐるみを抱えたアーレア王子が、いつになく物思わしげな表情で、首をかしげた。

「そう? じゃあその前に、ルキウスに見せたいものがある」

 ついてきて。

 そう言ってアーレア王子はくるりと踵を返した。

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