第24話 オムツ替え
「えっと、ミウちゃん。じゃあ、お着替えしようか」
そう言って、僕に抱きつくミウちゃんと共に身体を起こす。
過去のトラウマで小さな子供が苦手だったけれど、周囲にリナさんや明日香が居てくれたら大丈夫……これが今の僕の状態だ。
それを、結婚して子供が生まれた時に備えて、僕一人でも小さな子供と一緒に過ごせるようになるというのが最終的な目標となる。ただ結婚したい相手は居ても、結婚とか以前に付き合っても居ないので、気が早過ぎるというのは否めないけれど。
「むー、パパー、だっこー」
「はいはい。パジャマから着替えたらねー」
磁石のように僕へくっつこうとするミウちゃんのパジャマを脱がし……って、手を離してくれないから脱がせられないな。
「ふふっ。優ちゃん、頑張ってー」
僕のすぐ横で、未だに半裸のままのリナさんがニコニコ笑みを浮かべながら、苦戦する僕に温かい視線を向ける。
正直、すぐ傍にリナさんが居てくれなければ、今ミウちゃんと触れているだけでも倒れてしまいそうなのだから、居るだけでも凄く助かるのは事実だ。だけど欲を言えば、育児初心者の僕にアドバイスだとか、着替えを手伝ってくれたりすると凄くありがたいのだが。
暫く僕とミウちゃんとの膠着状態が続くと、心の声が届いたのか、リナさんが口を開く。
「優ちゃん。先に下から着替えさせても、えーんとちゃうかな」
「あ、そうだね。下に降ろすだけだしね」
「うん。あ、でもオムツも替えてあげてね」
……え? オムツ?
いやいやいや、ムリムリムリ!
ハードルが高いとかって次元じゃないよ。あれでしょ? イメージでしかないけど、コロンって寝転ばせて、脚を開かせて、お尻を拭いて、オムツを替えてテープを……って、出来ないよっ!
オムツのテープってどうするの!? お尻って何で拭くの? トイレットペーパーとか?
というか、ミウちゃんは女の子だよね? オムツを交換するって事は、言わばパンツを脱がせるようなものであって、赤の他人の僕が女の子のパンツを脱がせて、脚を広げて……って、まだ二歳にも満たないとはいえ、ダメじゃない!?
「優ちゃん。何を焦っているか分からへんけど、パンツタイプのオムツやから、脱がせて新しいのを履かすだけで良いよ?」
パンツタイプ? 履かすだけ?
詳しい事は分からないけれど、テープで止めたりするのって、赤ちゃん向けなの?
一人でいろんな事を想像してしまったけれど、考えていた手順よりは幾分ハードルが低そうだ。とはいえ、女の子のパンツを脱がす訳だけどさ。
「はい、優ちゃん。替えのオムツと、ミウの着替えやで。頑張ってー」
無地のオムツと小さなズボンを受け取り、再びミウちゃんに目を向ける。
リナさんは応援してくれているけれど、未だ手を出す気はなさそうなので、僕が自分でやるしかない。
女の子のズボンやパンツを脱がした経験なんて無いけれど、相手はミウちゃんだ。ミウちゃんのパンツを脱がす事さえ出来なければ、明日香のパンツを脱がす事なんて出来ないっ!
我ながら意味不明なこじつけと共に、僕の身体に顔を押し付けたままのミウちゃんのパジャマのズボンを両手で掴むと、そこから一気に真下へ!
何の抵抗も無くズボンが足元まで落ち、ミウちゃんの細い脚が露わになると、細すぎて何かあったら簡単に折れてしまうのではないかと、嫌な妄想が頭を過る。
パジャマのズボンを足元から抜き取らなければオムツが替えられないのだが、僕が足を持ち上げても大丈夫なのか? 怪我をしない? 壊してしまわない?
「優ちゃん、大丈夫やから。確かにミウの足は細いけど、無茶苦茶な事をせん限り、そんな簡単に折れたりせーへんって」
思わず固まっていると、見かねたリナさんが僕の手を取り、ミウちゃんの足に触れさせ、そのまま持ち上げさせる。
リナさんの脚はムニムニスベスベしていたけれど、ミウちゃんの脚はフニフニでモチモチしていて、弾力があった。小さくて細い身体だけど、柔軟性により守られていそうだと考えていると、
「じゃあ、そのままオムツも替えよっか。オムツの横が簡単に切れるから、両サイドを切って外して、新しいのを履かせて、はい終わりー」
再びリナさんに手を動かされ、あっという間にオムツ替えが終わってしまった。
残りのズボンくらいはと、僕がミウちゃんの脚を持って着替えさせる。
うん。やっぱり傍に誰かが居てくれれば、安心感が得られるからか、ミウちゃんと触れていても問題なさそうだ。
その後もリナさん指導の下で、上半身の着替えも済ませ、
「ところでリナさん。この使用済みのオムツって、普通に捨てて良いんですか?」
クルクルと小さく纏められたオムツの処理について聞いてみた。
ゴミの分別は自治体に依るのかもしれないので、リナさんよりも優子に聞くべきだったかな? と思った時、
「あー、それはウチらの世界から持ってきた物やから、残さない方が良いかも。向こうへ送って、捨てといてもらうわー」
床に置いてあったオムツがスッと音も無く消え去る。
何かの手品!? それともオムツって、自然消滅するの!?
何が何だか分からないと、再びリナさんに目を向けると、いつの間にかキャミソールが消えていた。
唖然としていると、パンツ一枚しか身に着けていないリナさんと目が合い、
「あ、ウチも着替えようかなって。み、見たいんかな? これが優ちゃんへのお礼になるのなら、このまま……」
「ご、ごめんなさいっ!」
僕は慌てて部屋から飛び出したのだった。
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