第191話 聖なる夜は童貞の卒業式らしい。
今日は、12月24日の金曜日。
期末試験も終わり、寮の食堂では、クリスマスパーティーが開かれている。
お嬢様方に囲まれた各テーブルの上には、クリスマスケーキが並べられ、夕食のメニューも、ローストチキンにスープとサラダが付いたクリスマス限定品だ。
そして、会場には声楽部の皆さんと、約1名の男子の歌声が響いていた。
「ぐろ~おおおおお~おおおおお~おおおおお~りあ~、い~ね~くしぇ~るし~すで~え~お~」
声楽部の皆さんと一緒に
お嬢様方の美しい歌声の引き立て役を無事に果たし、ほっとした気分だ。
「ダビデ君、ご協力ありがとう。最高だったよ!」
指揮者を務めた声楽部部長の
鉄先輩は、趣味が筋トレなので、
「ありがとう、ダビデさん。また、よろしくお願いします」
僕の隣で歌っていた副部長の
「ダビデさん、お疲れ様でした。また一緒に歌おうね!」
「ダビデ先輩は、声がイイですね。歌もすごく上手でした」
僕をここに誘ってくれた、105号室の姉妹にも声を掛けてもらった。
「わー、ローストチキンおいしそう!」
「ツヅミはケーキのほうがいいです~」
「ダビデ先輩、後ほど姉と一緒にお邪魔致しますので、よろしくお願いします」
最後に、アシュリー先輩の妹の、
パーティーが終わった後の事を考えると、それだけでドキドキしてしまう。
「ミチノリ先輩! こっち、こっち!」
しかし、僕をドキドキさせている張本人は、いつもと変わらない表情で、大きく手を振った後、自分の右隣の空席に座るようにアピールしている。
「お待たせしました」
僕はルームメイトの3人に頭を下げてから、ネネコさんの隣の席に座る。
テーブルの位置が会場の都合で少し移動していても、僕の左隣にはネネコさんが座っていて、正面にはポロリちゃん、斜め前の席には天ノ川さんが座っている。
この席は、誰でも座っていいはずの席なのに、周りの誰もが僕の席であることを認めてくれていて、僕以外の誰もが、この席には座ろうとしない。
こんな風に自分が座るべき場所があるというのは、とても幸せな事だ。
甘いケーキを食べながら、甘い雰囲気で3人とおしゃべりをする。
クリスマスの良さというものが、今年になってやっと分かった気がした。
「甘井さん、学年トップへの返り咲き、おめでとうございます」
「ありがとうございます。今回は、天ノ川さんとワンツーでしたね」
クリスマスパーティーが始まる直前に、食堂前のロビーには2学期の期末試験の成績上位者の名前が貼り出されていた。
4年生の成績順位は、僕が学年1位で、天ノ川さんが2位。
筆記試験の成績だけでは、前回1位の大石さんに今回も及ばなかったはずだが、期末試験の場合は体育と音楽と家庭科の実技の成績も加算されるため、総合では僕と天ノ川さんの方が、大石さんよりも成績が上位だったようだ。
おそらく、柔道の試合と歌の試験、
大石さんは、筆記試験は得意だが、実技はあまり得意ではないらしい。
「えへへ、ポロリはダメだったけど、お兄ちゃんが学年トップだから嬉しいの」
「お姉さまがミチノリ先輩に勝てないのは、実は手を抜いてるからじゃね?」
「ふふふ……、そんなことはありませんよ」
「1年生では、ネネコさんがトップだったよね? おめでとう!」
1年生の成績順位は、ネネコさんが学年1位で、ハテナさんが2位。
「今回は、リーネが生理で休んでたからね」
リーネさんは、また試験の日に生理が重なってしまったらしい。
部活もしばらく休んでいたので心配だったのだが、本人は「いつもの事だわ」と気にしていない様子だった。
「それでは、私達は209号室へ遊びに行きますので、今晩はごゆっくりお楽しみください。ネネコさんには、後でレポートを提出してもらいますからね」
「えへへ、お兄ちゃんも、ネコちゃんも、2人とも頑張ってね!」
「いってらっしゃい。
食堂でのパーティーが終わり、101号室に戻ると、天ノ川さんとポロリちゃんは、着替えとタオルを持って、部屋を出てしまった。
天ノ川さんから課題をもらったネネコさんは、目が点になっている。
「マジ? レポートって、ボク、何をレポートすればいいの?」
「あははは、あれは、ただの冗談だと思うよ」
本当にそんな事をされてしまったら、恥ずかしいのは僕の方である。
場合によっては、この寮にいられなくなってしまうかもしれない。
「ダビデさん、お晩で~す!」
「ダビデ先輩、こんばんは」
天ノ川さん達と入れ替わるように、209号室の姉妹が訪ねて来た。
2人ともセーラー服のままで、お揃いのリュックを背負っている。
おそらく、着替えなどが入っているのだろう。
「アシュリー先輩、本間さん、どうぞ、お入り下さい」
2人が泊まりに来る事は、ネネコさんにも説明して、了承済みである。
「お邪魔しま~す! ネネコちゃんも、お晩で~す!」
「蟻塚さん、こんばんは」
「あっ、どーも、こんばんは」
2人ともネネコさんにとっては、あまり近しい存在ではないようで、ネネコさんは僕の後ろで少し警戒しているような感じだ。
ネネコさんは人気者ではあるが、当人はどちらかというと相手を選ぶタイプで、ポロリちゃんのように、誰とでもすぐに仲良くなれるようなタイプではない。
とりあえず4人でコタツに入り、今後の予定を相談する。
相談の結果、アシュリー先輩と本間さんが先に風呂に入る事になり、2人が脱衣所に入ると、ネネコさんは安心したように口を開いた。
「もしかしてさ、ミチノリ先輩は、今日、ボクとエッチするつもりなの?」
「ネネコさんが、嫌でなければ……だけどね」
「嫌なわけないし……。前にも、したければ、していいって言ったじゃん」
「そうだけどさ、人目もあるし、体調とか気分とかもあるでしょ?」
「それにしても、カノジョを待たせ過ぎじゃね?」
「え? ネネコさんは、もっと早い方が良かったの?」
「ボク達が付き合い始めてから、もう2か月以上だし。パパに
「ごめん! 今日は、ちゃんと最後までするつもりだから、怒らないで」
「怒ってはないけど、ボクにだって都合はあるからさ」
「都合って、どういう事?」
「ミチノリ先輩と一緒にいるのを見られただけで、みんなから『どうだった?』とか毎回聞かれるしさ、『まだしてない』って言うと、ボクがやらせてあげてないと思われて、『先輩がかわいそう』とか言われちゃうし……」
「それは悪かったね。もっと早く言ってくれれば良かったのに」
「そんなこと言ったら、ボクがおねだりしてるみたいじゃん。それにさ、ミチノリ先輩って、ホントはボクよりロリのほうが好きなんじゃないかと思って……」
「そんな事はないよ。まあ、僕にとって、ポロリちゃんは特別な存在だし、目の中に入れても痛くないくらいに思ってはいるけど、それは、あくまでも『妹として』であって、僕のカノジョはネネコさんだけだから」
「でも、ロリのほうは、そう思ってないんじゃないの? ボク、自分でも、クラスではかわいいほうだと思ってるけど、ロリにだけは勝てる気がしないんだよね」
「でも、ポロリちゃんはまだ12歳だし、見た目だけなら10歳くらいでしょ?」
「それって、ロリとボクの誕生日が逆だったら、ミチノリ先輩は、ロリと付き合ってたかもしれないって事じゃね?」
「それは、僕の意志じゃなくて、ポロリちゃん次第だと思うけど、もしかしたら、その可能性もあったかもしれないね」
「だよね? だからさ、ボクから1つだけお願いがあるんだけど」
「どんなお願い?」
「ミチノリ先輩が、ボクとエッチしちゃった後、ロリとボクが気まずくならないように、フォローして欲しいんだよね。ロリは、ボクにとって一番の親友だからさ」
「もちろん。僕のせいでネネコさんとポロリちゃんの仲が悪くなったら、申し訳ないし、僕だって、そうなって欲しくはないからね」
ポロリちゃんをフォローするのは、兄である僕の役目であり、ネネコさんをフォローするのは、カレシである僕の役目だ。ネネコさんに言われるまでもない。
よし! これで、交渉は成立。僕は今晩で童貞卒業だ。
僕はかわいいカノジョの顔を見ながら、心の中でガッツポーズをしていた。
「お先に~!」
その後、間もなくアシュリー先輩が体にバスタオルを巻いたまま、脱衣所から出てきた。本間さんは、可愛らしい白いドレスのようなパジャマ姿だ。
「ダビデ先輩、お姉さまが『例のパジャマ』を貸して欲しいそうです」
「ダビデさん、アレ、ここにありますよね? 今日は着ないですよね?」
「はい。こちらですね。僕は着ませんので、どうぞ、お使い下さい」
「例のパジャマ」とは、この馬の着ぐるみのパジャマ「ディープインサート」だ。
元々アシュリー先輩から譲り受けたものなので、サイズの心配は無い。
前回のバージョンアップで
アシュリー先輩が、長い髪をドライヤーで乾かしている間に、僕はネネコさんと一緒に風呂に入った。
2人並んで、体をボディソープで
ネネコさんも僕も、股間を念入りに洗い、「なかよし」の準備は万全だ。
洗い終えたら、ネネコさんと一緒にお湯につかり、体もだいぶ温まった。
浴槽に長く
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