第65話 先輩に採寸されてしまうらしい。
「えーと、僕は追いかけたほうがよかったのでしょうか?」
「あの3人がいないのも、静かでいいじゃない」
副部長のアシュリー先輩は後輩たちとは違い、クールだった。
「ほっといても、すぐに戻って来ますよ。今のうちに本題に入りましょうか?」
部長である
「あの、お姉さま、私も聞いていい話なのですか?」
高木さんが不安そうに部長さんに質問する。どうやら部長さんと高木さんは寮の姉妹らしい。花戸さんと同様に何の話をするのかは聞かされていないようだ。
「ウブには刺激が強い話かもしれないけど、それでもよければね」
「いえ、それなら私も席を外します。ダビデ先輩はごゆっくり」
高木さんにとっては居心地が悪い雰囲気だったのか、部屋を出ていってしまった。
残っているのは部長さんと副部長さんと僕の3人だ。
「まずは、ディープインサートの話から。ミユキちゃんから聞いているだろうと思いますけど、あれは5年生の性交演習で使う着ぐるみです。毎年その学年で一番背が高い子が馬の格好をして種付け役をする事になっていて、去年はハカリさんで、今年はアシュリが着る予定なのです」
部長さんの話を聞きながら、アシュリー先輩が
その決まりだと、来年は僕が着るという事になるのだろうか。
「種付け装置の部分は出来るだけリアルに作ったつもりでしたけど、実は私もホンモノを見たことがなくて、『あんなの入らないよー』って言われてしまいまして……」
「たしかに、アレは人間離れしたサイズです。
「やはり大きすぎましたか……」
「僕も他の人のサイズまでは分かりませんけど」
「部長、それならダビデさんに採寸させてもらったらどうですか?」
「あら、それは言い考えですね」
「いや、きっと個人差もありますし、僕のサイズだと種馬としては小さすぎて、名前負けしてしまうのではないかと……」
種馬の着ぐるみなのに種付け装置だけ僕のサイズに合わせてしまったら、「どこがディープなの? チープの間違いじゃない?」とか言われてしまいそうで怖い。
「採寸するだけならいいのですね?」
「僕は遠回しに断っているつもりなんですけど……」
「まあ、ちょっとくらい、いいじゃないですか。アシュリ、お願い」
「はい、部長」
僕はただの冗談だと思っていたのだが、どうやら本気らしい。
アシュリー先輩から、いきなり羽交い締めにされた。
僕より体が大きいので力も強く、抜け出せない。
「えっ? マジすか?」
それだけならまだよかったのだが、アシュリー先輩の胸が僕の背中にぐいぐいと押し当てられ、童貞の僕はなすすべもなく下半身に血液が集まってしまう。
これでは採寸して下さいと言わんばかりだ。
そして部長さんが嬉しそうに僕の制服のズボンに手をかける。
そのままファスナーを下ろされるが、途中で引っかかって開かない。
「ちょっと、やめてください。花戸さんたちが戻ってきたら、まずいですって」
「美術室でも脱いだのですから、いいじゃないですか」
「あれは、モデルでしたから」
「あら、こちらにも採寸という大義名分がありますよ。それに、甘井君も身体測定で女子のスリーサイズを測ったのでしょう?」
「測りましたけど、僕も後ろの人に
「でしたら、これはお尻の代わりです」
「あっ! だめですって、それ以上されたら僕はお婿に行けなくなります!」
「もし、売れ残ってしまったら、私が責任をもってお相手をご紹介しますから」
そう言いながら、部長さんは僕のズボンのボタンを外し、パンツごと下げる。
ペロン!
「あっ!」
「これが種付け装置ですか。初めて拝見しました。たしかに思っていたよりはだいぶ小振りですね。そのかわり、硬さと角度は想像以上です。では、採寸致します。
――長さよし。――頭の太さよし。――茎の太さよし。――角度よし」
冷たいメジャーを当てられ、巻かれ、おまけに分度器まで当てられてしまった。
花戸さんたちが戻ってこなかったのが、せめてもの救いだ。
「ご協力ありがとうございます。あなたの先輩として、このお礼は必ずしますから」
部長さんはそう言いながら、僕のチープな種付け装置をパンツに押し込む。
「ダビデさん、ごめんね。そんなに落ち込まないでね」
アシュリー先輩は羽交い締めを解くと、今度は正面から僕の顔を胸に押し当てるように抱きしめ、頭を
僕は完全に力が抜けてしまい、抵抗する気力もなく、なすがままだ。
アシュリー先輩の胸は、温かくて柔らかくていい匂いがして、もう全ての事がどうでもよくなってしまうような不思議な感覚だった。
しばらくそのままの状態で
花戸さんたちが戻ってきたのはその直後だった。
「ねえねえ、ダビデ君、どうだった、どうだった?」
「楽しかったですよ。今日は誘ってくれてありがとう」
結局、採寸されただけだったのだが、副部長のアシュリー先輩から相応の見返りはもらえたような気がする。部長さんも、あとでお礼をしてくれるらしい。
「どういたしまして。それじゃ、今日は一緒に帰ろうよ」
花戸さんは僕の左隣に立ち、帰りも同伴してくれるらしい。
「そうですね。同じ方向ですから」
というか、帰る部屋は同じ寮の同じフロアだ。
花戸さんは、たしか105号室だったと思う。
「男子と一緒に帰るなんて、小学校のとき以来だよー」
「それは光栄です」
来た時と同じように、花戸さんと廊下を2人で歩く……と思ったのだが、背後には人の気配がある。
「あら、言われてみれば私たちもそうですね」
振り返ると、僕の背後には部長さんが歩いていた。
「かわいい後輩の女の子たちとは、毎日一緒ですけど」
その隣には背の高い副部長さん。
「ユメ先輩は、やっぱりダビデ先輩に気があるのでは?」
「でもお姉ちゃんがいくら頑張っても、ネコには勝てないと思うよ」
「あの天ノ川先輩の妹さんなのですから、かなりの強敵なのでしょうね」
「ネコはあのお姉さまと違って、真っ平らだけどね」
高木さんと中吉さんはその横に並んで楽しそうにおしゃべりしている。
「私はユメちゃん先輩なら、もっといい人がすぐに見つかると思うけどなー」
そして杉田さんは、いつの間にか僕の右隣を歩いていた。
それは、手芸部員総勢6名に僕を加えた7人での集団下校だった。
どうしてこうなったのかを考えてみれば、全員同じ寮なのだから当たり前だ。
「こらこら、好き勝手に失礼な事言わないの! ダビデ君からも何か言ってあげて」
花戸さんは手芸部でも中心的な立場で、後輩たちから慕われているようだ。
僕はときどき後ろを振り返ってみんなの質問に答えながら、普段の半分以下の速さでゆっくりと歩く。
夕日の中を歩くお嬢様がたの姿は、僕には、とても
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