ギャグ系短編集

命取り物語

　今からすると、そこそこ昔（2－3年前）のことになるんだけど、命（たま）取りの組長がいたっぽい。他所の組に行っては色んなやつの命とったり、抗争に明け暮れたり色々あくどいことをしていたみたい。マジ卍。

　組長の名前は、忘れた。

　正直関わりたくもないし興味もないからね。

　たまたま（命だけに）組長やんちゃだったから、あれやこれややりまくって他所で出来た子を育てることになったらしい。愛人の子とか引くわ普通。

　まあそれでも可愛かったみたいだし組の中で大事に育てたらしいよ。ちな女の子。

　それから16年くらい経ったらしいんだけど、それはもうめちゃ可愛く育った。どのくらいかというと近所の男はみんな、この命取子（たまとりこ）（仮）をものにしたいと思った。

　言うて家がほら、ね、あれじゃん？　だからパンピーはうろうろするだけだったらしいよ。

　でもある日一人の勇者が家を訪ねたっぽいけど怒鳴られてちびって速攻でダッシュで帰っていった。それ想像したらマジ竹生えた。

　そんなヘタレとは違って取子をガチで狙う奴らがいたわけ。しかも五人よ。は？　マ？　でもそいつらは諦めがかなり悪い。昼夜問わず来てたわけ。

　え、仕事は？　もしかして無職の方ですか！？

　五人の名前は、忘れた。

　正直そういうのどうでもいいしね。とりま端っこからA～Eとかでいいんじゃね？　今宵はそういうノリで良き。

　でもそれがほんマジかなりしつこくて、組的にもアレだったのかな。見物人がでてきた。そいつら諦めないかなぁ……（チラッ）じゃダメだったらしい。

　組としても堅気に手を出すのは良しとしないから、やっぱり手をこまねいていたみたいだね。

　正直組長と取子もいい加減イラッとしてた。

　だからある手を考えたわけ。なんとそのストーカー五人を家の中に入れちゃった！で、そいつらにそれぞれお願いをして、合格！　ってやつと所帯を持つ約束をしたらしい。

　でもその音声をレコーダーでとってたバカがいて、一度ボッコボコにしばかれたらしい。どうせSNSでアップ↑する予定だったんだろうな。

　五人にお願いした内容は、忘れた。

　多分こんなだったと思うんだけど？

　○×組の組長の命取ってこんかいワレェ！×５。

　いやぶっちゃけそうでしょ。その手の方が他に何を御所望になるっていうのそれ以外に。

　結論からいうと全員OUT。そりゃそうでしょ。そいつらがどうなったのかはちょっとわからない。

　そんなこんなで退屈な日がまた訪れたわけ。そんな中、取子組も襲撃が度々されるようになった。どうやらオフェンス側の組の若頭は取子が欲しいようだった。でも昔から仲の悪い組同士だから縁談とか無理とかなんとか。

　だから奪うしかないじゃんとか竹。頭の中、戦国時代かよ。

　それでもなんとかライン交換だけできたらしい。まあ、取子はいやいやだったけど暇つぶしのために仕方なく？

『お前が一緒になってくれないからめっちゃテン下げなんだけど？』

『は？　貴様風情が私と釣り合うわけないだろ。恥を知れクズ』

　そのやり取りで若頭めっちゃへこんだらしい。いやそもお前が悪いんだけどさ。

　でもちょっと言い過ぎたかなって取子も思ったらしくて、会ってはやらないけど返事だけはイイ感じの返そうと思ったんだって。

　そんなラインのやり取りが3年続いたんだけどすごくね！？　実は好きなんじゃないの？

　時々空を見上げては独り言を言ってるって組の下っ端が証言したらしい。情緒不安定なんじゃないのか取子。まずは通院をお勧めしたい。

　何ヶ月かすると、病状が悪化したのか『ふはははは、我は闇より出でし混沌なる†命取猫姫†なるぞ、眷属共よこちらへ来い』とか言い出したらしい。なんだこいつ。本格的に可哀想な子になってた。

　でさ、もっと恐ろしいのはあの若頭も中二になってたことかな。『我は光の皇子（みこ）。闇と光が合わされば我らは無敵となろう！　さあ、姫よ現世（うつしよ）の記憶など捨てよ！』とか言ってて本格的に致命的にワールドがエンディング迎えてる。

　でも似たもの同士惹かれあったんだろうね。取子は家出を決意した。組長はものすごい引き止めたけど娘可愛いんだろうな。結局許すことにしたみたい。

　取子は寂しくなったらこれ見て！　とかいってラインで何か打ってる。

『このジャケットおいてくから、これを私だと思えばよくね？　オヤジ、ガチでテン上げじゃね！？』

　それを最後にこの家から出て行ったっぽい。裸足で。

　取子は今どうしてる？

　精神科で治療受けてるんじゃないかな？