贋造探偵 ~ようこそ報復ミステリー倶楽部へ!~

作者 雪車町地蔵(そりまち じぞう)

なぜ人はまどろっこしくなると愛おしくなるのか

  • ★★★ Excellent!!!

非常に屈折した子どもたちによるミステリーです。ある高校の、あるクラスにいじめがあって、いじめられっ子が死ぬことが物語の発端となります。

本編中ではひたすらに「ぼくは」「俺は」「私は」とこれでもかと高校生たちの自意識がバリバリ展開されていく。いじめられっ子の死に直面した同級生たちの語りは、生き生きとして、何かに目を背けていて、一読で闇雲でどこか息苦しかった学生時代の記憶が蘇ることでしょう。

主役として同級生たちを分析・推理する二人はその最たるものです。彼と彼女、ワトソンとホームズの持って回った・うざってえ・修辞を尽くした喋り方は、冷静でロジカルであろうという懸命な意志を感じさせ、その切実さがこのお話の提示するたくさんの謎を追うモチベーションとなりました。

いじめられっ子は死んだ。自殺? 事故? 殺された? どうして? どうやって? いじめられてた理由は? 原因は? いじめられる方にも責任があるのでは? なぜいじめの傍観者は何もしてないだけで同罪とされてしまうの?

殺されたいじめられっ子の為の復讐を試みる二人。そのやり方はあまりにまどろっこしい物語の捏造と推理というプロセスが繰り返し繰り返し行われます。そしてその営みの中でのみ、とんでもなく屈折した事実が明らかにされていく。その頃には我々もとっくに共犯者で、もう引き返すことはできません。

そう、この物語を読むことは、このまどろっこしくって理解しがたい子どもたちと同じ地に立ち、そして愛す為の工程に他なりません。

どうして彼らが愛おしい存在になるのか。あなたも読んで、その理由を考えてみてくれませんか?

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