第35話魔法使いBravery その4
あれから二人で夕飯を食べた後、俺たちは夜遅い中例の近くの公園に移動していた。
理由はもちろん、今日も異世界大戦をエンジョイするためである。
「はぁ〜寒いなぁ〜」
「そう?『イマジナル』の寒いところはここよりよっぽど寒いわよ」
「・・・・それここでいう北極とか南極とかのレベルの話してる?」
それは次元が違う。君はあれくらいじゃないと寒いと言わないのかい?頭おかしいんじゃねーの(怒)
ちなみに俺の服装は長袖のシャツに青と白のパーカーを羽織っただけの格好だ。寒いならもっと着込めばいいのにという意見もあるだろうが、別に冬の寒さみたいな痛い感じじゃなくて、雰囲気的に寒いという感じなのだ。わからないかな〜この春特有の冬の寒さに慣れすぎて暖かくなってきても寒く感じてしまう感じ。頼むからわかってください。
「それじゃあ行きますか」
「ええ、今日もよろしく頼むわ」
一方ミリエルはすでに先程のラフな姿から最初出会った時の戦乙女天使へとチェンジしていた。変身に関しては某少女戦士とかみたいに一旦裸になって〜とかではなく、光をまとったら一瞬で変わってる感じだった。夢とか云々はないんだな。
俺はミリエルの横顔を少し見てそう思いながら、ポケットから『デモギア』を取り出す。これが半異世界『
『デモギア』の項目、『異界転移』をタッチする。すると画面が切り替わり、指紋認証のタッチの指示が表示される。誤作動で転移してしまわないようにするための安全装置なのだろう。俺は間髪入れずに親指を画面に数秒押し当てた。すると指紋認証が完了したようで、画面に『PERFECT』という文字が表示された。
『指紋認証完了。次に契約者の音声認証を開始します。
『東条 未治』
『・・・・確認しました。
『デモギア』の音声案内がそう告げると、あたり一帯はモザイクで支配される。そして公園はまたしても、この世界には存在しない何か達によって全く異なる様相を見せた・・・・だが今回は前回と少し違い、ところどころに大きな岩がごろごろと転がっている。それに草や木は一本も生えていなかった。変わらないのは、背景に浮かび上がるいくつもの液晶画面には絶えず世界の様々な情景をごちゃまぜにしたようなものが映っていることだろうか。
「本当に頭おかしくなりそうな世界だな、ここは」
「まぁそれは同感ね。『イマジナル』と『ネプタ』が混ざり合った世界・・・・私もあなたもここは知っている世界のようで知らない世界ということよ」
「そうだね・・・・っと、早速お出ましだ」
二人で公園の周辺を探索していたところ、突如新たな影が俺たちの前に出現した。
現れたのは、三体の『
「"小鬼"か・・・・ミリエル、頼むよ」
「了解。さっさと片付けるわよ!!」
ミリエルは"小鬼"たちに向かって勢いよく走り出す。彼女の手にはすでに愛槍である『
「ハアアアアアッ!!」
ザシュ!!
ミリエルは"小鬼"たちの先手を取る速さで、一体に向かって思いっきり槍を振り下ろす。反応できなかった"小鬼"はそのまま真っ二つになって青い粒子に変わる。しかし、仲間がやられても御構い無しにほかの"小鬼"たちはミリエルに襲いかかった。
しかし、それを難なくかわしたミリエルは、攻撃により隙ができた"小鬼"たちに向かって手を伸ばす。
「『
ミリエルがそう叫ぶと、彼女の手から炎が巻き起こり、残りの二体の"小鬼"を焼き尽くした。まぁ灰にはならずに青い粒子みたいに消滅したという感じだけど。
「・・・・おつかれ、もうこれくらいだと俺いらないよなぁ」
「そうね、野良の異世界生物相手なら私一人でも十分いけるわ。問題は契約者同士の戦いね」
実際、ミリエルは徐々に単独戦闘にも慣れて魔法などを適度に使用したりなどかなりバリエーションに富んだ動きを自分で行うことができている。そもそも俺の得意分野である戦略は集団の指揮などを主にしているためあまりこういうちょっとした戦闘は活躍することはないのである。
・・・・やはり早急に新しいメンバーが欲しいところだ。
「いいじゃない。私がいれば十分でしょ」
「そうでもないよ。"小鬼"くらいならなんとでもなるけど、例えば相手の契約者がしっかり4体編成で来たとしたらきっと苦戦するはずだからね」
「それはそうかも・・・・といっても4体も従えてる契約者なんて珍しいけれどね。そんな簡単に異世界生物の野良と遭遇することは難しいもの」
たしかに・・・・ミリエル以来、めぼしい野良の異世界生物とは出会っていない。契約者も多くは一体だけと契約している人が多いのだ。そんな簡単にはいかないだろう。
『デモギア』には、先程倒された野良の"小鬼"三体分のポイント1500+(1000-98)の×3、それに戦闘勝利の100足して7206ポイントが報酬画面に表示されていた。
100かけることの720600、72万円か・・・
「普通RPGとかじゃあゴブリンごときでこんなに報酬よくないはずなんだけど・・・・・本当これは悪魔のゲームだよ」
だからこそ、なんとしても生き抜かなければいけない。いや、生きていきたい。俺はこの世界をなんだかんだで楽しんでいるのだ。だから手放すことはしたくない。
「さて、まだまだいきますか」
「よーし、夜しか外出られない分暴れるわよ〜〜!!!!」
「あんまはしゃぎすぎんなよ」
「わかってるって〜」
俺たちは再び周辺の探索を始める。たびたび"小鬼"が現れたりしたがミリエルがあっさりと倒していった。
今宵の宴は、まだ終わらない。
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