第40話 11-2クロという青年

 少女は上がる息を抑え、椅子の上に立つ。手にした縄は部屋中央に渡った梁に括り付けられ、黄色と黒の蛍光色が目に焼き付いた。


「はぁ……はぁ……」


 少女は数十分、縄を見つめ涙を零していた。

 自分で決めた事とは言え、その一歩が踏み出せない。


「…………」


 諦めた目で、ちらりとパソコンの画面を見る。そこには、いつも通り軽快な口調で喋るアウルのゲーム画面が表示されていた。次々に白いコメントが浮かび、消えていく。


「うっ……」


 また一つ涙を零し、少女は息を止め、椅子から降りた。

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