第33話 8-4大国ポタンと兄の噂

「どうしたんだ、アウル」

『ん、いやー……』


 歯切れの悪い返事をするアウルに、スオウは怪訝な顔をして考えていた。


「なにかあったのか?」

『ちょっと気になる事があるというか、大した事じゃないんだけど』


 通話越しに、瓶のふたを開ける音が聞こえた。スオウもまた、PC前に並べていた小瓶を一つ手に取り開ける。


『なぁ、この企画って本当に参加者は五人だけなのかな』

「どういう事だ?」

『ハイデって女の子が現れたのは昨日言ったろ? その子がさ、どうも……いや、考えすぎかな』


 喉を鳴らす音が聞こえる。ひとつ溜息を吐いて、再び口を開く。


『ま、あんまりにも可愛いもんだから、ちょっと夢に出てきたって話だよ』


 一転して明るく話すアウル。

 いつもとは違った空気に一瞬だけ身構えたが、ただの杞憂だったようだ。


「ところで……悪いが今日から数日家を空ける事になると思う」

『病院か?』

「まぁな」

『あんまり無理するなよ、ここ数日俺のせいで対応に追われてたみたいだし』

「ただの検査入院だよ、気にすんなって」


 早くなっていく鼓動を抑えつつ、スオウはピルケースを握り締めた。

 スオウの身体は限界が近かった。もともと身体が弱く、頻繁に入退院を繰り返していた。それが最近は寝る時間すら削っていた為、無理が祟って体調を崩しているのもまた事実だった。


「一人で大丈夫か?」

『平気、今は一人じゃないからな。仲間がいる』

「へぇ、お前の口からそんな言葉が出てくるなんてな」

『面白い奴らなんだぜ、今日もさ―』


 早まる鼓動とアウルの軽快な喋りを聴きながら、夜更けの静けさを感じていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る