第26話 6-5失声の少女ハイデ

 少女は怯えていた。

 次から次に涙を流し、片手にはカミソリを持って応答する。その手は忙しなく震え、切っ先がゆらゆらと動いていた。


「ごめんなさい、ごめんなさい、私が弱いばかりに」


 カミソリは少女の薄い皮膚をまっすぐに切り裂き、赤い玉のような血をいくつも浮かばせている。


「はい、そうです、はい……私が、全然わかってなかった……うっ」


 震える手で浅い傷をいくつも並べ、しかし死ぬ勇気もない事にまた涙を零す。


「んーん、何もしてないよ」

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