第9話 3-4ようこそフローワールド

 薄暗い部屋に、小さなパソコンが一つ。少女は安物のイヤホンマイクを付け、ちらちらと明滅する画面を凝視している。


「アウル……アウルって言うんだ」


 漏れた独り言を聴く人物は、この部屋に存在しない。

 画面の中では小さな少年が、大きな武器を両手で抱え巨大なモンスターに立ち向かっている。それは、ゲーム画面のようだった。

 不意に別のブラウザを立ち上げ、カタカタとキーボードをたたき「アウル」と入力する少女。出てきたのは、「OWL」という単語だった。


「ふく、ろう。フクロウの事なんだね、アウルって」


 少女の声は、部屋に響いて溶け入り、消えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る