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 日向明里が小瀬蓬と結婚をしたのは、二人がお付き合いを初めてから十年後のことだった。

 その結婚式に、平結衣はきちんと出席した。

 そのとき、明里と蓬は二十八歳で、当たり前だけど、同級生の結衣も同じように二十八歳だった。

 結衣はその日、本当に心のそこから二人のことを祝福したのだけど、幸せそうな明里と、その横にいる蓬を見て、……あそこに自分が立っている未来もあったのかな? と学院時代を思い出して、そんなことをふと思ったりもした。


 小瀬蓬は結局、大学の准教授になった。

 明里は専業主婦として、家庭に入って、蓬のことをパートナーとして、献身的にサポートしているようだった。

 結衣は結局、アイドルとして大成することはできなかった。

 それなりには成功したのだけど、結衣が考えていたようには、平結衣はアイドルとして輝くことができなかった。

 でも、その代わり、結衣は女優として大成した。

 結衣は現在、日本でも上から数えて数番目には、誰でもその名前が上がるくらいの有名な実力派の女優になった。

 子役として芸能界に入り、やがてアイドルになり、そして今は女優になった。

 結衣は大勢の人たちを笑顔にできるアイドルに憧れていた。

 でも今は、自分の演技で大勢の人たちに感動を与えることが一応、できていることに、結衣はそれなりに満足を感じていた。


 平結衣はそれからずっと女優として、生涯を過ごすことになった。

 そして結衣は、最後の最後まで、誰とも結婚をせずに、独身のままを貫いた。

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