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「え? あの、ちょっと待って!」

 そう言って結衣は思わずベンチから立ち上がり、その場でおろおろとして狼狽えてしまった。そんな結衣を見て、小坂くんは楽しそうに笑った。

「平さん。相変わらず面白いね」と小坂くんは言った。

 それから結衣は少しベンチの周囲を歩いたりして、数分の時間をかけて、自分の気持ちを落ち着かせると、一度深呼吸をしてから、さっき座っていたベンチのところに腰を下ろした。

「落ち着いた?」

「……うん。だいぶ」頷きながら、結衣は言った。

「じゃあ、改めて告白させてもらっていい?」と小坂くんは言った。

 結衣はなんて言っていいのかわからなくて、黙っていた。

 黙ったまま、小坂くんの顔を見ていた。

「僕は、……小坂慶太は平結衣さんのことを世界で一番、愛しています。僕とお付き合いをしてください」

 小坂くんは真剣な表情と声でそう言った。

 その言葉は恋坂の中で、名前のところ以外は、主人公の男子高校生の少年がもう一人の主人公である女子高生の少女に告白をする台詞そのままだった。

 それはきっと、小坂くんがわざとそうしたのだと結衣は思った。


 あのとき、映画の中で小坂くんはもう一人の主人公の女子高生に告白をしながら、同時に平結衣にも告白をしていたのだ。

 そのことに、結衣は二年経った今、ようやく気がつくことができた。

「返事を聞かせてくれますか?」

 小坂くんは結衣に言った。

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