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「恋坂は、いい映画だった。上映できなくて残念だった」小坂くんは言った。
「うん、そうだね。確かに残念」結衣は言った。
結衣はそう言ったけど、人気役者である小坂くんが、恋坂にそこまでの評価をしていることが少し驚きだった。
恋坂は確かにいい映画だったと思うけど、小坂くんには恋坂よりもずっと良いと思える、実際にもすごく大ヒットしたたくさんの主演を演じた有名映画があった。
「恋坂が上映されていたら、きっと平さんはアイドルだけじゃなくて、女優としても、もっと、もっと評価されていたと思う」小坂くんは言った。
「え?」
結衣は驚いた。
確かにすごくよかったと周囲の人たちから褒められたけど、共演者の小坂くんがここまで結衣のことを評価してくれていたとは知らなかった。
結衣はなんだか照れくさくなった。
「ありがとう。小坂くんにそう言ってもらえると、すごく自信になる」にっこりと笑って、結衣は言った。
すると小坂くんは少し顔を赤くして、結衣から顔をそらして、近くに咲いている桜の木を見つめた。
結衣も同じように、桜の木を眺めた。
穏やかな春風が、公園の中を吹き抜けた。
その風を感じて、……素敵な日曜日だな、とそんなことを結衣は思った。
「平さんは、今誰かに恋をしているでしょ?」
そんなことを小坂くんは言った。
結衣はすごくびっくりした。
確かに結衣は、心の中で蓬のことを思っていた。
その心を、まるで小坂くんに盗み見されたみたいに思って、結衣は慌てた。
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