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「……小坂くん?」
そこに立っていたのは、小坂慶太くんだった。
有名人の慶太くんは、帽子をかぶり、小さな赤い鳥居の前で、舞い散る桜の花びらと、大きな桜の木々をじっと、透き通るような綺麗な目で、見つめていた。
結衣の声を聞いて小坂くんは結衣にその顔を向けた。
すると小坂くんは「平さん?」とすごく驚いた顔をして結衣を見た。
それは二人にとって、恋坂の映画の撮影が終わってから、約二年ぶりとなる、再会だった。
「久しぶり」小坂くんは言った。
「うん。久しぶり」結衣は言った。
それから二人は、赤い鳥居の中にある、小さな神社に備え付けられた小さな公園の中で、少しだけ話をすることにした。
「こんなところでなにしてたの?」
公園のベンチに座って結衣は言った。
神社の中の公園には人の姿はどこにもなかった。
そこは、とても静かな場所だった。
周囲は桜でいっぱいで、すごく素敵な場所だった。
その桜を見て、結衣は蓬のことを思った。
「桜を見に来たんだ。……それから」
「それから?」
「映画のこと。考えていた」と小坂くんは言った。
「映画って恋坂のこと?」
「うん。恋坂のこと」
小坂くんは結衣を見る。
小坂慶太くんは背が高く、大人しい性格で、顔の形はとても凛々しい形をしていた。さすがに人気のある役者さんだと結衣は思った。
結衣は小坂くんの演技がすごく好きだった。
小坂くんは本当に実力のある役者さんだったから、結衣はそんな小坂くんと恋坂で共演をして、すごくたくさんの勉強をさせてもらったと思っていた。
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