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「将来、結婚しようよ。僕たち」
青空の下で、陸は言った。
「結婚? まだ早いよ。私たち、中学一年生だよ?」当時十三歳だった、中学生時代の早月が言う。
「だから将来の話だよ。僕と早月が大人になったらの話」
「私たちが大人になったら」
「うん。僕たちが大人になったら、僕たちは結婚するんだ。ね、いいでしょ?」そう言って陸は無邪気な顔で笑う。
「うーん。どうしようかな?」
にっこりと笑って早月は言う。
それから早月は自分のすぐ横に寝っ転がっている陸の顔を見る。陸は笑っている。それから二人はまた、青色の空に目を向ける。
二人は学校の屋上にいる。
誰もいない屋上に二人だけで寝っ転がって、青色の空を見ている。
自由な空。
すごく広くて、高い空。
そんな空に深田早月は手を伸ばした。
太陽が眩しい。
そんなことを、なにかをその手に掴もうとしながら、早月は思う。
そんな早月の手を、隣にいる陸の手が捕まえた。
陸はその手を自分の胸の上に移動させる。
早月は横を向いて陸の顔を見る。
陸の顔はすぐ近くにあった。
それもそのはずで、早月は陸の右手を枕のようにして、屋上に寝っ転がっていた。
「なによ」
そう言って、にっこりと笑いながら早月が陸の顔を見ると、陸はなんだかすごく真剣な顔をしていた。
「どうかしたの?」
早月は言う。
陸はずっと黙って、早月の顔をじっと見ている。
「早月」
陸は言う。
「なに?」
早月は言う。
「僕と、結婚してくれる?」
真剣な表情のまま、すごく真面目な声で陸は言う。
「……うん」
少しの間、お互いに見つめ合ったあとで、早月は言う。
「本当に?」
陸は言う。
「本当だよ」早月は言う。
「本当の、本当に?」
陸は言う。
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