99 早月 ……いつも、そばにいてくれたね。
早月
……いつも、そばにいてくれたね。
「今日は楽しかったね」
帰りの電車の中で、高田奏は深田早月にそう言った。
「うん。そうだね」
にっこりと笑って早月は言う。
でも、その笑顔の中に、いつもの早月の元気はなかった。
もう真っ暗になってしまった、冷たい雪の降る、冬の空を電車のドアの窓越しに見ながら、早月は沈黙する。
その横に立っている奏は、そっと隣にいる早月を見る。
「なに考えているの?」奏が言う。
「なんにも」早月は言う。
それから早月は奏を見る。
すると奏はとても心配そうな顔で早月のことをじっと見ていた。
「もう。なんて顔してんのよ」
明るい表情で早月は言う。
それから早月はそっと奏の手を握った。
暖かい奏の手。
その手を握りながら、早月は中学校時代に亡くなってしまった、自分の幼馴染みである、如月陸のことを思い出していた。
今日。
十二月二十四日。
クリスマスイブの日。
この日は、陸の命日だった。
如月陸は深田早月の隣の家に住んでいた男の子だった。
陸はとてもかっこいい男の子で、ずっと幼いころから女の子にもてもてだった。早月もよく友達から、陸くんと幼馴染みで羨ましいと言われたりした。
でも、別に早月はそんなこと言われても、嬉しくもなんともなかった。
二人はただの仲が良い幼馴染の関係だった。
早月が、中学校に上がるまでは……。
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