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次の日曜日、二人は約束通りに一緒に彼のいる区内の図書館に向かった。
小春はその日、白いワンピースを着て図書館に向かった。
恵は野球帽に黒のTシャツとデニムのハーフパンツという、ボーイッシュな格好だった。
「なんだかちょっとどきどきするね」と恵は言った。
「うん。どきどきする」と小春は言った。
でも内心、小春はどきどきなんて表現ではすまないくらいに、……緊張していた。
恵は彼のことを見て、どう思うだろう?
もし恵が、彼いい人だね、とか、小春とお似合いだと思う、とか言ってくれたら、それは小春にとって(おそらく恵が思っている以上に)、……すごく勇気をもらえる出来事だった。
そうすれば、小春はこのあと、次の、あるいは次の次の日曜日くらいには、彼に名前を聞くことができるかもしれない。
彼に話しかけて、彼と一緒に、毎週、日曜日に図書館で勉強ができるようになるかもしれない。
そんなことを考えているだけで、小春の心は、幸せでいっぱいになった。
「……小春? おーい、小春ってば?」
そんな恵の声が聞こえないくらいに、小春はこの日、すごく緊張していたのだった。
小春と恵は図書館に入館した。
「ふー。中は涼しいね」恵が言う。
「うん。そうだね」にっこりと笑って、小春は言う。
それから二人は図書館の中を移動して、いつもなら彼のいる学習席のある場所まで移動した。
彼はほとんど日曜日にはこの場所で勉強しているのだけど、彼がいない日曜日もあった。もし今日がそんな彼のいない日曜日であったらどうしよう? と小春は少し心配していた。
でも、そんな小春の心配とは裏腹に彼はちゃんとそこにいた。
彼の姿を見て、小春はすぐに、いた、と思った。
そして、恵の手を引っ張って、「ほら、あれが彼だよ」と言おうと思った。
でも、小春はそれをすることができなかった。
なぜなら、いつも一人で勉強している彼の横には、彼と楽しそうに会話をしている、髪をポニーテールにした、綺麗な顔をした、スカートの短い制服を着た、そんな一人の女子高生が、……いたからだった。
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