番外編 いつでもここで
窃盗の入電に隣の盗犯係が対応している間も、二人の刑事の間には沈黙と緊張感が漂っていた。
「これって・・・
樫井は画面の中の美しい40代後半の女の顔をじっと見つめ、静かに頭を抱える。
「世田谷署が2月の事故当時にそれを疑ったので、記録が残ってたみたいですね。
僕、暇な時は色んな未解決資料読むの好きなんですが、これはめちゃくちゃ記憶に残ってます。・・・遡ったら何人の犠牲者がいるかわかりませんよ。
港区と葛飾区でもこの女に関係した家庭が、二世帯とも一家離散状態でした。
あぁー・・・でも絶対怪しいと思って僕が目を付けていたのは、間違いじゃなかったんですね! 先輩の大事件を引き当てる嗅覚は、麻薬探知犬以上ですもんね!」
出世欲と向上心を抑える事のない晴見は、大掛かりな事件の予感に興奮した様子で一方的に話し続けた。
樫井はお祭り騒ぎの若い相方を特に構う事もせず、パソコン画面の被害者データを片手でスクロールしながら、静かに手帳にメモを記入し続けている。
「若林
・・・なんだよこれ、こんな真っ黒で捜査打ち切り!? 何が起こってるんだ?」
「えーっと・・・若林好恵は、30年前に新宿で幅を利かせていた【
元組長の最後の住所は、遠い親戚が調布で営む建設会社の持ちアパートですね!
先輩・・・これって・・・マジでヤバいやつじゃないですか!
これ見て下さい!ネットでこの
6年前の記事によれば・・・警視庁OBが会社の警備部門の監査役や顧問という名目で、15年の間に3人も天下りしてるらしいです!
これは・・・正直、所轄の刑事ごときの手に負える敵じゃないっすよ・・・。」
晴見はそう言って樫井のノートパソコンを勝手に閉じると、周りの目を気にしながら自分の席に戻って行った。
樫井も組織の人間としての立場は徹底して叩き込まれている。
初めて対峙した巨悪に怯える様に項垂れる後輩を、責める事は出来ない。
黙ってもう一度パソコンを開いた樫井は、震える指先をキーボードに乗せた。
「・・・これは俺の独り言なんだけど・・・。
ネットの情報によると、どうやら元組長の若林
好恵が8年前に3人目の旦那に購入させた、下北沢のスナックが4年前に潰れた後も、とくに都築建設が土地を買うなどの関与はしていない様だ。
天下りしたOBのうち2名も、丁度この頃に退職している。
・・・父親の盾を無くし、店も潰れて稼げなくなった好恵が次に目を付けたのが、奥さんを亡くしたばかりで病気だった橘さんというのは間違いない。
だけど、後妻業に邪魔な娘を排除しようとして失敗した上に、未だに入籍もすんでおらず、入院中の橘さんに手を出すことも出来ない彼女が、都築建設を頼っていない所をみると、好恵は切り捨てられた可能性が高いだろう。
過去の3件の再捜査は難しいかも知れないけど、まだ命のある橘さんは救える可能性が十分あるんだ。 こんな悪人が父親の財産欲しさに、何の罪もない子供を殺そうとしてるのを知ってて黙ってるだけなんて・・・俺は出来ない。」
慣れない手つきで画面を変えながら調べている樫井は、まるで自己暗示をかけるかのように小声でそう呻いている。
そんな一人の優しい刑事の姿を、晴見は書類の山の隙間からじっと見つめていた。
「・・・都築建設に未だに残ってる、この元警視のRって一体何者なんでしょう?
こんな真っ黒な会社、なんで組長が死んだときに他の連中と一緒に辞めなかったんでしょうか?・・・まさか、殺しまでもみ消してたとか?」
「そりゃーないだろうな・・・。
そこまでやってたら、もっと必死に橘さんを消すのを手伝うはずだ。
・・・大方、過去の勢林会絡みの不祥事を好恵に握られているせいで逃げ出せず、
好恵の方は何件もの殺人の証拠を握られてる為に、これ以上は派手な動きが出来ないって
好恵が起こした事件のどれか一つでも立証できれば、Rも大人しく全て吐くさ。
殺人の片棒を担いだと疑われるよりは、どんな不祥事でも罪は軽いだろうから。
そしてRという砦すらも崩されて後ろ盾を全てなくした都築建設が、どういう態度を好恵にとるかなんて火を見るよりも明らかだな。」
樫井は晴見の疑問に淡々と答えると、画面の中の好恵を睨みながら相関図をメモに記していった。
「好恵は・・・随分と細い綱渡りをしているんですね。
切羽詰まったら、何をしでかすか分からない危うさを感じます。」
「あぁ・・・彼女にしてみたら、好き勝手にやれていた時代の駒が段々と減ってきた今、橘家が最後のターゲットだろう。高飛びすっかもなぁ・・・。」
樫井はそう呟き、手帳を眺めながらペンを回す。
良く知る先輩の本気で悩んでる姿を見かねた晴見も、再び携帯で検索をし始めた。
「橘正義で検索掛けたら、すぐ色々と出てきましたよ!
病気療養を発表する前は・・・結構有名なデザイナーだったみたいです。
5年前に都築建設が施工した公園の、遊具のデザインを担当したっぽいですね。
えー! 赤堤の一軒家、クソでかいっす! なんか庭に離れ?みたいなロッジまでありますよ!? うわぁ・・・こりゃ狙われるだろうなぁ。
僕が悪人だったら、まず確実に娘の息の根を止めて・・・傷心の父親に付け入り、ガンの緩和ケアが進んで意識が混濁した頃にサクッと入籍して、根こそぎ財産をかっぱらってセブ島辺りに高飛び移住しますね。」
「・・・お前が悪人じゃなくて良かったよ。」
妙にやる気を出し始めた相棒を呆れたように見つめる樫井は、溜息をつきながら橘家の個人情報をメモにまとめていった。
晴見は一通り調べつくして満足した様子で、あごに指を当てて目を閉じる。
「あかり・・・どっかで聞いた事ある様な・・・。あかりちゃん?
えっ!?先輩・・・松宮さんがいつも話してるアプリのモデルって・・・。」
「二人は本当に恋人だ。じつは・・・香苗や杏花さんも共通の友達なんだ。
ただ、朱莉ちゃんは・・・その、実家の事や自分の話は一切しない・・というか、出来なかったんだろう。継母があれだしな。彼女の本音を誰も聞かないうちに意識不明になってしまったから、その・・・連絡もつかなくなってな。
今までみんなで探していたんだ。まさかこんな事件の被害者だったとは・・・。」
歯切れ悪く何かを繕うようにそう話す樫井を、晴見は不思議そうに観察していた。
「・・・なんか、いろいろと時系列がおかしい気もしますが・・・。
まぁ、僕には分からない様な世界もきっとあるんでしょうね。
皆さんが以前から絆で結ばれていて、一人の少女を救いたいという気持ちを持って色々探っていたのは事実でしょうし。僕は何も知らなかった事にしときます。
・・・先輩、松宮さんにはなんて伝えるんですか?」
晴見はデスクの上ですっかり冷えた缶コーヒーをすすりながら、樫井を真っ直ぐ見つめて尋ねる。
樫井は事件の内容を調べる時よりも苦しげな表情を浮かべ、額をごちゃごちゃの机に打ち付けたまま突っ伏した。
「晴見が良い奴で俺は本当に嬉しいよ・・・。
松宮君には事件の話は出来ない。犯罪の情報を漏らすことになるし、彼が乗り込んだら危険だから家も教えてあげられない。
でも・・・入院先の病院は教えようと思う。いつ会えなくなるかも分からないのに秘密にしとくなんて、やっぱり俺には耐えられない。
あぁーークソっ!・・・何とかして若林好恵をパクりてーな。
派手に動いて彼女や都築建設にバレたらまずいけど、少しづつ証拠押さえていって再捜査認めてもらえそうになったら、世田谷署の同期に掛け合ってみようかな。」
樫井は固く決意したように顔を上げてそう言うと、ファイルを作って集めた資料をまとめ始める。
「先輩ならきっとそういう判断すると思ってましたよ。
んじゃー・・・まず僕はこの週刊誌の記者にあたって、過去の3件の後妻業について洗い直してみます。先輩は病院関係者の聞き込みをお願いします。」
「・・・晴見、手伝わせていいのか?」
テキパキと資料に目を通しながら記者の名前を検索し始めた晴見を、申し訳なさそうに見遣った樫井は再度確認をする。
「先輩の手伝いなんていつもの事じゃないですか!何も気にしないでください。
あ、もし好恵を逮捕出来たら、また報告書に僕の名前も載せて下さいね!」
「・・・わかったよ。晴見はもう仮眠しとけー。」
呆れながら欠伸をした樫井は、そう言って手帳をたたみ帰り支度をする。
「先輩も少し寝てから帰った方がいいですよ?・・・むしろ良くヤッたあと普通に出歩けますね。その体力も尊敬しますけど・・・。」
「なっ!?・・・え?・・・そうします。」
飄々と話す後輩を直視できなくなった樫井は、真っ赤な顔を腕で隠しながら足早に部屋を出ていった。
仮眠室のドアをくぐり、空いている簡易ベッドに腰掛けて携帯を確認する。
【トイレに起きたら居なくてビックリしました。お仕事かな?
朝ごはん用意してから家に帰るね。
帰宅したらゆっくり食べて引っ越しまで休んでてね!】
「天使だ・・・可愛い。なんて可愛いんだ!!」
杏花から来ていたメッセージに、樫井はガタガタと足踏みしながら身悶える。
思わず零れ出た言葉が静かな部屋に響き、奥で寝ていた若い刑事が飛び起きた。
「あ・・・すみません。」
血の気の引いた表情で固まる後輩に謝った樫井は、勢いよくベッドに倒れ込み無理矢理に目を閉じる。
携帯を握りしめて胸に当てる彼の顔には、自然と穏やかな笑みが溢れていった。
――― 時刻 16:30 西嶋家
長いお茶会の為に杏花が大きなポットで淹れた紅茶は、女子たちの止まらないお喋りの潤滑油としての役目を終えて殆ど空になっていた。
夜勤明けの仮眠を終えて朱莉を迎えに来た誠士は、引っ越しの準備をしていた香苗の荷物を運ぶ手伝いを申し出る。
「香苗・・・荷物は本当にこれだけなの?」
2階から降ろした荷物は、大きなボストンバッグ1つとキャリーバッグのみだった。
あまりの持ち物の少なさに驚いた誠士は、玄関先に置いた荷物を見つめて尋ねる。
「うん!私は身軽な渡り鳥ー!って感じ?」
ふざける様にそう言った香苗は、鼻歌を鳴らしながらキッチンへと戻って行った。
「私は余ってるテレビとか調理器具、化粧台とかタンス持って行けって言ったんですけど・・・。せっかく大きなお部屋を借りれたんですし、もう少し便利な生活してみてもいいと思うんですけどねぇ・・・。」
テーブルを片付け終わった杏花は、ソファで御影を抱きながら静かに呟く。
「ほーんと!誠士くんと杏花さんのお祓い、私も見学しに行ったけどめちゃくちゃ収納あったよねー?私だったら色々なレイアウト楽しみたくなっちゃうよ♪」
たたみかける様な杏花と朱莉のお節介をかわす様に首を振った香苗は、ダイニングテーブルに着席して一息ついた。
「・・・多少、不便なくらいの方がさ、私みたいな人間を成長させるのには丁度いいんだよ。二人に最後に聞くけどここに居たら毎日美味しい杏花のご飯食べれて、御影とゆっくり話せるんだよ?・・・本当に一緒に来てくれるの?」
虹色の宝玉からアメとウカを呼び出した香苗は、頬杖をつきながらそう尋ねる。
「わ、私はどっちかっていうとー家庭的な薄味の杏花のご飯よりも、アンタの作る野性味溢れた適当な
アメは水色の前髪を指先でいじりながら、モジモジと体を揺らして答える。
「・・・ここだけの話、アメは香苗さんの作る『唐揚げの卵とじ丼』が生きてた中で一番旨いって言ってたんだの。
僕は・・・杏花さんにドレスを無理矢理着させられなくなるって思ったら、正直ホッとしてるんだのぉ・・・。」
ウカは誠士と朱莉の間にフワフワと近寄り、杏花の視線を気にしながら囁いた。
「アメもウカも、香苗さんが大好きなんだね♪
・・・あ、それにー・・・こんなに愛される香苗さんならさ、きっと沢山の人からのプレゼントでお部屋一杯になっちゃうもんね!初めは荷物少ない方が良いよ!」
アメとウカの言葉に安堵したらしく、下瞼にうっすら涙を溜めていた香苗の隣にそっと寄り添った朱莉は、香苗の腕に抱き着きながらそう言って笑った。
「か・・・可愛すぎる!! ねぇー朱莉たん・・・。あんたも一緒に来るー?
そこのワンパターンそうな王子様よりー、私の方が色々教えてあげられるわよ?」
興奮気味に椅子から立ち上がった香苗は、朱莉の頬を両手で挟んで思いっきり顔を近づけると、誘う様に耳元で囁く。
真っ赤に染まった顔で固まった朱莉を大慌てで誠士が引きはがし、『そ、それは色々な意味で困る!』と叫びながら困惑の表情を浮かべた。
「お前達・・・何を
この家は、ずっとここにある。誰がどこに引っ越そうがそれは変わらない。
家という物は、家族の増えた減っただとか、場所がどこに有るかは重要では無い。
人間は一人で生まれ、一人で死ぬのだ。 ・・・ただその一生の中で、共に生き、大切な仲間と集い、語り合いたいと思える場所があるなら、それこそが皆の家だ。
私たちは、いつでもここで会える。
香苗・・・安心して羽ばたいて行くがよい。
お前を縛る鎖など、もうどこにも無いのだから。
・・・そして、いつでも好きな時に戻っておいで。ここがお前の家だ。」
御影が薄緑色の瞳で真っ直ぐ香苗を見つめてそう語りかけ、静かに微笑む。
フワフワの赤錆色の背を撫でる杏花の手の甲に、いくつもの涙の雫が落ちる。
その姿をじっと見ていた香苗の表情は少しずつ歪んでいき、震えだした両手で顔を覆った彼女は、引きつった様な嗚咽を漏らした。
双子の神たちは暖かなすすり泣きの音に包まれた部屋を見渡して、そっと宝玉へと戻って行った。
誠士の腕の中で泣いていた朱莉は、玄関のチャイムが聞こえるとゆっくり顔を上げて涙を拭く。
誠士は褒める様に彼女の頭を撫でると、来客を迎えに玄関へと走る。
朱莉は向日葵の様な笑みを浮かべ、その後ろ姿を見送った。
「遅くなりましたー!・・・あっ、松宮さんこんにちは。え?荷物これだけ?」
晴見は扉を開けた誠士と、その足元の荷物を見つめて驚きの声を上げる。
そして真っ赤に泣き腫らした目を擦って出てきた香苗と杏花に視線を移すと、彼は困惑の表情で固まった。
「あ・・・はい、荷物はこれで全部です。
・・・ちょっと離れるのが寂しかったらしくて。少し待っててあげて下さい。
では、俺はもう帰りますね。 あっ樫井さん!お疲れ様です。」
誠士はそう言ってキャリーバッグを掴むと、トランクを開けていた樫井の元へ運んでいく。
「松宮君もバイトお疲れー!手伝ってもらって悪いね。
・・・あ、明日とか夜飯いこー。ちょっと話したい事あるからさ。」
「え?・・・あ、はい、分かりました!楽しみにしてます。」
少し俯き加減で話す樫井に、誠士は戸惑いながら答える。
晴見はまだしゃくりあげている香苗の背中を支えながら、残りのボストンバッグを運んでトランクへ積み込んだ。
「香苗、じゃあまた今度ね!落ち着いたらランチ会でもしよう。
杏花さん、お邪魔しましたー!・・・(朱莉、そろそろ帰るよー。)」
誠士は晴見に促されて車に乗った香苗に声を掛けると、玄関の奥に向かってこっそり手招きする。
樫井と小声で話をしていた晴見がふと振り返り、その怪しい動きに気付いた。
「・・・松宮さん。僕、いつでも松宮さんの力になりますから!
気をしっかり持って一緒に頑張りましょう!あかりちゃんもきっとそれを・・・」
急に玄関先へ駆け寄った晴見は、誠士の手を取ってそう語っているうちに感極まって一人で泣き始める。
あまりの異様な光景に、香苗は車の中で口を開けて絶句していた。
ちょうど御影を抱いて見送りに出てきていた杏花も、朱莉と目を見合わせて驚きの表情を浮かべて固まっている。
「は、はぁ・・・??」
呆気に取られた誠士が不思議そうに頷いていると、慌てて駆け寄った樫井が晴見を車の後部座席へと押しやった。
「あ・・・アハハ!ごめんねー・・・晴見、最近辛い事件が多かったみたいで。」
樫井は誠士の目を見ずにそう話すと、夕暮れの薄ら寒い風の中で止めどない汗を垂らしている。
朱莉は不信感に満ちた刺々しいオーラを放つ杏花からそっと離れ、ふわりと誠士の隣へ降り立つ。
「そうですか・・・では、また明日宜しくお願いします。」
樫井にそう答えて朱莉に目配せをした誠士は、小首を傾げながら駐車場の自転車をひいて帰って行った。
「りょーちゃん・・・引っ越し終わったらここに来てくださいね?」
「えっ!?・・・ど、どうしたのかな?杏花さん。」
いそいそと運転席へ向かおうとした樫井を呼び止めた杏花は、柔らかな笑顔を向けてそう告げる。
「なんでもないですよ・・・ちょっとした、事情聴取をしたいだけです。
今日から誰も居ないので、ゆっくりお話できそうですね!楽しみに待ってます。」
「そ・・・そうだね。分かったよ。」
樫井が汗を拭って答えると、すぐに杏花は踵を返し勢いよく玄関の扉を閉めた。
「・・・先輩すみません。思わず余計な事を・・・。」
引き攣った笑顔のまま車に乗り込んで震える手でエンジンをかけた樫井に、晴見は項垂れたまま謝罪し続けた。
「な・・・なんのことかな?じゃ、じゃあー三茶まで出発しますかー!」
「樫井ぃーーーー・・・こういう時はゲロった方が楽なんじゃないのぉー?
誠士には黙っといてやるから、さっさと全部話しなさい。
じゃないと、杏花が知らなくて良い事を沢山知ることになるでしょうね・・・。」
「ひっ・・・。」
樫井の背後から首筋に腕を回した香苗は、色っぽい声で耳元に脅し文句を囁いた。
「いいなぁ・・・じゃなかった。ホントすみませんーーー!!」
羨ましげな視線を隠せない晴見の絶叫を響かせながら、グレーのセダンは新天地へ香苗と少ない荷物を運んでいく。
都心へ近づくと、ハロウィンパーティーの仮装をした人々の姿が目立ってきた。
「渋谷、新宿辺りの署は大変そうですね。」
晴見は静かにそう呟きながら、香苗に自白を始めた樫井に声を掛ける。
「俺は今も、帰ってからも大変なんだが・・・。」
飛び出そうとしている若者に気付いていない対向車に、素早くパッシングして危険を知らせた後でゆっくり走りだした樫井は、遠い目をしながらそう答えた。
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