第34話 アリーナもやってた

 色々あっても、私は学生だ。

 当然、そっちが最優先である。

 日夜、画期的な回復魔法や結界魔法をなんとかして作れないものかと、なにかとゴチャゴチャやっている。

 しかし、今回は普段なにやってるか分からないアリーナだった。

「……なに、なにを作っちゃったの?」

「……う、うん、最新の理論を山ほどブチ込んだ百二十ミリ魔力砲。魔法工学で生み出したものって、どうしても兵器に転用されるからね。いっそ作ってやれってやったら、超絶高性能になっちまって、そっちの筋で話題騒然になっちまって、見学者が絶えないと」

 アリーナがため息を吐いた。

 なにに使うのか大きな部屋には噂のバカデカい魔力砲が置かれ、人だかりが出来ていた。

「……私はアリーナがちゃんとやってるって知って、逆にホッとしたけどね」

「……そりゃやってるよ。やってるから、こうなっちまったんだろ?」

 アリーナがため息を吐いた。

「これ絶対パクられるからね。今後のスタンダードは、間違いなくこれになっちまうぜ。一気に百二十ミリ時代だぜ?」

「……いや、分からんが、出来ちまったもんはしょうがねぇな!!」

 私は笑みを浮かべた。

「……笑い事じゃねぇよ。どれだけ威力があると思ってる。今までのなんか、完全にオモチャだぞ。エラいもの作っちまったぜ」

「作っちまったもんはしょうがねぇ。まっ、どんな化け物だろうが、私の結界の前には無駄だけどね!!」

 アリーナは小さく笑った。

「そのサーシャの結界をいかにぶち抜くかがスタートだったんだよ。私が知ってるサーシャのいかなる結界もぶち抜くぞ!!」

「……それが本当なら、防げるものがないと自負してるぞ。もっとも、アリーナには一部しかみせてないけど、それだけでもほとんど防げないぞ!!」

 アリーナがため息を吐いた。

「だから、とんでもないの作っちまったって。戦場を変えちまったぜ」

「それでも、えげつない攻撃魔法よりはマシだ。せっかく作ったんだから、自慢しとけ!!」

 私は笑った。


 その夜、個人研究室で相変わらず呪文を弄っていた。

「うーん、もうちょっとなんだけどな。表だって蘇生をやるとうるさいから、普通の回復魔法に混ぜてやったぜ。これなら、使わなきゃバレねぇ!!」

 ……懲りない私だった。

「にしても、アリーナのヤツ遅いな。先に帰っちまうぞ……」

 などと呟いた時、アリーナがメイスで扉を叩き破って入ってきた。

 問答無用で私を掴むと、そのまま部屋を飛び出た。

「な、なんじゃい!?」

「やっぱ過激な馬鹿野郎が暴れたぞ。ああいうのみると、興奮しちゃうから。結界張っといて!!」

 私は自分に結界を張った。

 進む先の廊下から、なんか気持悪い光線が飛んできた。

 それを私で弾き、アリーナはメイス片手に一気に突っこんだ。

「手加減はしねぇ!!」

 アリーナがメイスを振り、三人ほど倒した。

 さらに気持悪い光線が山ほど飛んできたが、アリーナは私でことごとく防いだ。

「いい度胸だ!!」

 アリーナがメイス片手に暴れ、気持悪い光線は私で跳ね返し、変な野郎どもはあっという間に鎮圧された。

「どうだ、私の結界は。盾に使うには最高だぜ!!」

 私は笑みを浮かべた。

「非常策だよ。好きでやってるわけないだろ!!」

 アリーナは私を抱きしめた。

「よし、洗ってやろう!!」

「……それは忘れないのね」

 ……猫の盾。

 特許申請しようか、真面目に検討中である。

 もっとも、こんな妙な物体の申請が通るか分からないが。

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