第27話 ひたすら裏方!!

 学園祭とかいうらしいが、特に積極的に参加するつもりもなく、準備もしていなかった。

 とはいえ、地味な裏方仕事は存在した。

 ある意味、この上なく私に向いた作業ではあった。

「おい、ここでいいのか?」

「うん、この通路だね。この先は危ないから」

 校内地図を手にしたアリーナに確認しながら、わたしは「立ち入り禁止」と朱書きされた親切設計の結界を張った。

「ったく、事前にやっとくもんだろ。今になって慌ててやるってよ!!」

「そのやったヤツが抜けてて、漏れが多いらしくてね!!」

 アリーナが私を抱えた。

「次だ!!」

「ったく、バイト代くれよな!!」

 校舎内を駆け回り結界を張っていると、途中で怪我人に遭遇した。

「ぎゃあぎゃあうるせぇ、これでも食らえ!!」

 回復魔法でととっと怪我を治し、次の結界現場に向かった。

「ああ、ここ結界張っちゃダメだって。誰だよ!!」

 私は結界を解除した。

「隣の廊下だろうが、ちゃんと仕事しろよ!!」

「おう、いい感じじゃん。その調子だぜ。最初から、サーシャに頼めばいいのにね」

 アリーナが笑みを浮かべた。


「し、しかし、デカイ校舎だぜ。こんなに結界を張りまくったの、初めてだぞ!!」

「おう、あとで洗ってやるから頑張れ!!」

 アリーナに抱えられて校舎を走り回り、ひたすら漏れがあったり変なところにあった結界を直し、暴れすぎて怪我をした馬鹿野郎を治し、これはこれで妙な楽しみを覚え始めていた。

「おい、次の現場はどこだ!!」

「あいよ!!」

 廊下を走っていると、どっかの魔法学校の制服着た五人組がフラッと現れた。

 瞬間、五人の顔面にアリーナの拳がめり込んだ。

「……なに、なんか迎撃したの?」

「うん、空気で分かるぜ。ただの、猫好きとナンパ野郎だ。邪魔!!」

 倒れた五人を無視して、私たちは校内を走った。

「……うん、猫好きはいいんじゃない?」

「ついでだ。分別するのが面倒だった!!」

 まあ、なにもなかった事にして、次の現場に着いた。

「ったく、なんで三重結界にしてるのよ。しかも、場所が違うし。解除に手間かかるんだよ!!」

「……もはや、サーシャが結界職人だぜ」

 アリーナが私の頭に黄色いメットを被せた。

「……おい、どういうつもりだ!?」

「特注で作ったぜ。こんな事もあろうかと!!」

 私は笑みを浮かべた。

「おい、監督。次はどこだ!!」

「か、監督!?」

 アリーナが慌てて地図を見た。

「一番近いのはあっち!!」

「おう、運んでけ!!」

 アリーナは私を抱えて走った。


「さ、サーシャ、休憩……」

「馬鹿野郎、監督がそれでどうするんだよ。気合い入れて走れ!!」

 アリーナが私を抱えて走り回り、私がひたすら結界を直し、オマケで怪我人を治し、校舎を全て回った。

「お、終わったぞ……」

 体力自慢のアリーナが廊下にひっくり返った。

「ったく、デカイ校舎だぜ。意味あるのか?」

「魔法自習室がデカいんだよ。空きスペースに作った教室はオマケだ!!」

 アリーナがいった。

「ああ、そういうことか。にしても、学園祭って楽しいな。こんなに結界張れると嬉しいぞ!!」

「楽しみ方が違う。それに、これ終わったら全部解除して回るんだぞ。バイト代も出ないのに!!」

 私は笑みを浮かべた。

「今度はもっと楽だ。頼むぜ、監督!!」

「ま、また、走るのかよ!!」

 アリーナはグッタリ床に伸びた。

 学園祭とは裏方と見つけたり。

 この認識に間違いは……多分、なかった。

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