第16話 魔法✕機械
魔法の一分野に、魔法工学というものがある。
よく分からないが、魔法と機械とかいうものを組み合わせ、単純な魔法では出来ない様々な事をやるらしい。
そこの学生が、なにかゴツいものを作ってしまったとかで、校庭に置いてあるからとアリーナと見にいった。
「……なに、あの鉄の塊?」
「いいねぇ、あの主砲として搭載してる魔力砲。百二十ミリはあるんじゃない。馬鹿野郎だな!!」
アリーナには分かるらしいが、私にはただの油臭い鉄の箱だった。
「……結局、あれってなに?」
「うん、最近は平和だからイマイチ人気ないけど、魔法工学の粋を集めて作られた兵器だぜ。なんで、学校であんなもん作っちまったんだろうな。しかも、あれ無人制御だってよ。ハイテクだぜ!!」
よく分からないが、アリーナが喜んだ。
「で、その隣に並んでる、見るからにボロいのって?」
「うん、聞いた話しだとあれの前に作った試作だって。こっちは、検証用に一人乗りらしいぜ!!」
正直、どうでも良かったので早く帰りたかった。
「もういいだろ。なにが、面白いんだか……」
「いいじゃねぇかよ……ん?」
アリーナが声を上げた。
よく分からないが、ボロくない方から派手な音が聞こえた。
「おい、魔道エンジンか掛かったぞ。なんか、やっちまう気か!?」
アリーナが喜んだ。
「……やっちまうって、なにをだよ!?」
ガタガタが派手な音を立てて動き始めたそれは、いきなりなんか青白いものを発射した。
命中した校舎の屋根で派手に爆発が起き、色々ぶっ壊れた。
「……おいおい」
「……認めたくないものだな。無人制御ゆえの暴走というものを」
アリーナが遠くを見つめながら行った。
その間にも、見に来ていた連中がただならぬ事態を察して、一斉に攻撃魔法を放った。
しかし、その鉄の箱の周りには防御結界でも張られているらしく、全く攻撃を受け付けなかった。
「……いい防御だぜ。ありゃ、普通に攻撃魔法を撃っても埒が開かないぞ!!」
アリーナは私を抱え、もう一個のボロい方に飛び乗った。
「さて……」
なんでか手慣れた様子でアリーナがなんだか弄り、軽く突き上げるような振動と共にガラガラうるさい音が響いた。
「いい音だぜ。さすが、魔法工学科自慢の魔力エンジンだな。アレを倒すには、コイツが積んでる魔力砲が必要なんだ。この魔力圧縮率は、機械じゃなきゃできねぇ!!」
「……なんか分からないけど、なんで動かせるの?」
アリーナは笑みを浮かべた。
「タダの王女は何だって出来るんだよ!!」
「……そりゃすげぇ。ちゃんと勉強もやれ。出来てねぇから」
アリーナは無視して、なんか操作しはじめた。
ガタガタともの凄い振動と共に走り出した鉄の塊は、次の瞬間には信じられないような加速を見せた。
イカレた新型も脅威と見なしたのか、攻撃対象をこっちに変えた。
跳び来る青白いヤツを避けながら、こっちはなぜか赤黒いヤツを撃ち返した。
「なかなかよく出来てるじゃん。なんで、学校でこんなの作っちゃうかねぇ」
ペロッと舌を出し、アリーナは赤黒い何かを撃った。
それは相手に当たったが、弾かれた。
「やるじゃん。やっぱ、正面は抜けないか!!」
景気よく校庭を走り周り、相手の青白いヤツがこっちに命中した。
爆発と共に派手に揺れたが、アリーナは全く気にしなかった。
「まともに食らうようなヘマはしないぜ。軽い分、機動力はこっちの方が上だな!!」
「……今は黙っていよう」
ひたすら走り回り、アリーナが相手の背後を狙っている事だけは分かった。
散発的に青白いのと赤黒いのが飛び交い、流れ弾で校舎が盛大にぶっ壊れている気がするが、私はなぜ自分がここにいるのか、真剣に考えていた。
「さて、仕留めるか。派手にいくぞ!!」
まさにど派手に揺れ、赤黒いヤツが発射された。
相手の後部らしきところに当たった赤黒いヤツは、簡単に弾かれた。
「……一番弱いことろでこれかよ。なに作ってくれやがった!!」
アリーナは私を掴み、なんかメカメカしい中に埋もれるようにあった、ガラス玉のような場所に押し付けた。
ガラス玉が光り、私から猛烈な勢いで魔力が吸い取られている事を感じた。
「て、テメェ!?」
「後で奢る。こうでもしないと勝てない!!」
猛烈な衝撃を伴って発射された赤黒いヤツは、相手を簡単に貫通した。
爆発と共に相手は動きを止めた。
「ふぅ……ある意味、サーシャが仕留めたようなもんだぜ。この莫大な魔力で押し切らなかったら、とても無理だったぜ!!」
アリーナが息を吐いた。
「い、いいけどさ。魔力の素に使われちまったぜ!!」
私は苦笑した。
「よし、逃げるぞ。こんだけぶっ壊しちまったからな。どっか、人目に付かないところで、爆破処理でもして捨てる!!」
「……頑張ったのにね、可哀想に」
猛スピードで校庭を駆け抜け、私たちは逃走した。
いきなり強烈な出会いを果たした魔法工学だが、なにも物騒なものばかり作ってるわけではなかった。
「おーい、なんか手伝ってくれってよ!!」
個人研究室で礼によってゴチャゴチャやっていたら、アリーナがやってきた。
「手伝い?」
「うん、どうしても魔力エンジンの燃焼効率が上げられないとかで。また魔法工学だけど、基本的な部分は魔法だからさ。どうもねぇ、呪文の構成がどうとか……」
そういう話なら、私の領分だった。
「魔法工学自体はよく分からないけど、手伝えるなら手伝うよ」
「うん、最初から拒否権はないけど、同意が得られてよかったよ」
アリーナが私を抱えた。
「な、なんで、拒否権を認めてくれないんだよ!!」
アリーナは答えなかった。
巨大な校舎らしく、巨大な倉庫のような真ん中に、もうメカの塊というデカい何かが置いあった。
「こ、こんなの見せられてもね……」
「うん、今はこの呪文構成で魔力を燃焼魔法に変えてるらしいんだけど、予定出力の半分も出ないんだって。要するに、効率よく魔力を燃焼魔法に変換出来ればいい。早い話、魔法を使ってるのと変わらないんだ」
アリーナに見せられた紙には呪文がビッシリ書かれていた。
「……おい、誰が書いたんだよ。こんなんじゃ、ロスしかでないぞ。イチから書き直しだな。こんなんじゃ話になんねぇよ!!」
「……それ書いたの私なんだ。やっぱり、サーシャには全然及ばないな」
アリーナが苦笑した。
「お前が書いたのかよ。なに勉強してるんだよ。ったく……」
私はササッと呪文を書き直した。
「ざっとやってみた。突き詰めれば、もっといけるぜ!!」
「うん、これでやってみよう」
アリーナはその紙を近くにいた学生に渡した。
しばらくデカいなにかを弄っていたが、全員が離れたと思ったら爆音と共に甲高い金属音のようなものが響きはじめた。
「う、うるさい!!!」
「いい音だぜ!!」
金属音はどんどん高周波に代わり、青白い火柱がデカいヤツから延々と吹き出していた。
「すげぇぞ、予定出力を軽く超えちまった。セーブしないと爆発しちまうぜ!!」
「ば、爆発はやめろ!?」
しばらくして、デカいヤツは徐々に静かになった。
「これが最大の課題だったんだって。今、空を飛ぶ機械なんて信じられないものを作ってるらしくてさ。これをクリアしたって事は、そのうちお目に掛かるかもね!!」
アリーナがいった。
「へぇ、人間は妙な事にチャレンジするねぇ。その精神は好きだけどさ。まあ、この程度なら手伝えるぞ!!」
私は笑みを浮かべた。
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