第21話 二人の霊気、特別な繋がり 6/5
ふと私の霊気量は具体的にどれだけなのか気になってとミーナに聞くと、
「そうですねぇ、今飲んでいるお茶のティーカップが一般人の霊気量だとすると、私はあの樽風呂の樽くらいで……」
と、まで言ったところでミーナが考え始めたので、やはりミーナは凄い、とすると私はあの樽風呂の樽よりちょっと小さいくらいか、霊術士の中でも珍しい霊気量とはいえ霊人の彼女ほどでは無いだろうと思っていると、
「この家の一階分かそれ以上、ですかね」
私はいきなりのその発言にむせてしまった。ええ! なんだって!
「本当か、それは。買いかぶり過ぎなんじゃないのか」
と、驚きを隠せずに言うと、
「一応事実です。まず間違いないでしょう」
返されたので得心するより他なかった。
何でも霊気量というものは実際の所よくわからない、というのが普通で一般人のそれがわかるのは基本的に一般人の霊気量が少なく測りやすいからそのティーカップに例えられると補足があった。
個々人の正確な霊気量はほぼ枯渇に近い状態で霊気を外側から入れたときに最も正確に本人のみが知れる、つまり枯渇しかけて自然回復するときにしか当人でも正確に知ることはできないということ、霊人はある程度自分と他人の霊気量が枯渇しかけていなくともわかるとの説明もあった。
言ってみれば霊術士は枯渇しかける体験していない限り、自分の限界よりもかなり少ない範囲内でしか霊術を使えない事になる。
ゲーム的に例えるなら最大マジックポイントを100持っているのに70までしか数値が見えていないという状態とも言える。そして枯渇しかけるというのは数値が見えていないのに99ポイント使ってしまうことであり、そんなハイリスクな事を誰がやるのかという話である。
(私は枯渇「しかけた」のではなく、枯渇「した」ので逆に自分では分からなくなったらしい)
なる程と思って感心しつつ聞いていたのだがでは何故ミーナは私の霊気量を測れたのか、なぜリアルタイムで観測できるのだろうか、それが気になり、
「なあ、そんなに測るのが難しいならなんで私の霊気量を……」
と、言いかけたところで私はハッとした。病院でのアレだろう。そう思いミーナを見ると少し赤くなっている、もちろん夕日のせいもあるだろうがそれ以外の何かであるのは間違いない、つまり病院でのアレである。
「あぁ、すまない。なんとなくわかったよ。アレだよな、アレ」
とすぐにカバーした。
先程の影響か少し場に沈黙がもたらされた。もちろん悪い意味ではないが。私はなんとかこの沈黙を打開すべく、霊気連結についてもう少し詳しく聞きたいとミーナに話しかけた。
「あ、ああ、ええっと、霊気連結ですね」
と、不意を突かれたような声で反応し、
「霊気連結というのは、その名の通りで私とルカワさんを例に取ると、私の霊気とルカワさんの霊気が繋がっていて、相互に霊気をやり取りできるというものなんです」
つまり霊気のタンクが繋がった状態になっていて一方が減れば渡すこともできるし、感知することもできるということである。
また、霊気連結は体に触れていなくても離れすぎない限り繋げたままにする事ができ、もちろん連結を切ることもできるし、再び繋ぐこともできる。霊気伝達は霊気連結をしていないと出来ないとのことである。
それから霊気連結はお互いの関係性にも影響され、親族ならば大分離れていても連結でき、伝達もできる。友人くらいならこの首都の半分位、顔見知り程度だと連結すらしないそうだ。続けて、
「恋人や夫婦とかになってくるとお互いにどれだけ想っているかが重要になってきます。想い合っていないと友人レベルにも届かないときだってあるみたいです」
と、恥ずかしそうに伝えてくれた。更にそこから、
「私とルカワさんは特別な霊気連結なんです。病院でのアレが一番大きな要因です」
と、言った。そうだ、アレは想い合っていないと、しかもその想いが大きくないといけないものだ。
特別というのはそういう意味だろう。そう直感した私は、
「大体わかったよ。ミーナから教えて貰うしかないことだけど言うのは恥ずかしいもんな」
と、ミーナの手を握ってあげた。
「ありがとう、ルカワさん」
そう笑顔で返してくれた。
やはりミーナの笑顔は眩しい。夕日にも負けないくらいに。
そんなやり取りをしていたのだが、私達の霊気連結はもう少し奥があるのだそうだ。
何でも私達の霊気連結は他のそれとは違い感度も性能も数段上であるらしい。霊気伝達における感度は恐らくヴァイクとミーナのそれ以上、霊気のやり取りは通常だと渡すのが限界だが私達なら相手の霊気を直接使える。
つまりミーナが私の、私がミーナの霊気を勝手に拝借することも出来る。との事と、
「意図的に連結を止めるか、意識しないでおくかしないと相手のしていることや何処にいるのかわかってしまいます。その上相手の意識の中に入り込んでしまうことも可能です」
と、伝えられた。
要するに霊気伝達は物凄く遠くまで届き、勝手に相手の霊気を使え、スイッチを切っておかないと位置測位と監視カメラが作動していて、最悪視界ジャックや精神操作まで可能だということだ。
いつでもどこでも相手の場所がわかって、何時でも電話がかけられると言えば良いように見えるが、最悪自分を乗っ取られる、と言う訳である。
「お、おおう、そりゃまた物凄い連結だな」
凄いとは思うがミーナは不安じゃないのかと心配になった。
「うふふ、意識が覗けるってさっき言ったのにそれをしないルカワさんだから安心です、試しに覗いて見て下さい」
そう言われ、意識の中に入るのは幾ら何でも気が引けるとまごついていると、
「仕方ない人ですね。えい」
と、声が聞こえた瞬間、私の意識はミーナに引っ張られた。
目を開けるとそこは何やらふわりふわりと浮いていてぼんやりとした景色がひろがっていた。
「ここは」と、声を出すと「ここは私の意識の中ですよ」と、ミーナが突然目の前に現れた。意識の中とはこんな感じなのかと感心していると、
「この空間には長くはいられません。長くいると戻れなくなっちゃいますよ」
と、後ろからミーナの声がした。
私は驚いてどうなっているのかミーナに尋ねると、
「ルカワさんならここにいてもしばらくは大丈夫そうですね」
と、私の手を握ってきた。そして、
「この空間でその人に触れるってことはその人が入ってきた人を信頼している、想っているってことなんです。でも大丈夫そうとはいえちょっと心配なので戻りましょうか」
と、言った。
「ちょっと待ってくれよ、一体何がどうなって」
「戻ってから話しますよ。ここの空間の支配者は私なので私の一存でルカワさんを戻します。拒否権はありませんよ」
小悪魔的な笑みを浮かべて「ばいばーい。ではまた後でー」との声を最後にまた意識が切れた。
意識の中のミーナは少し、というか大分小悪魔的であった。人間とは一概に測れないものである。
それから、間違いなくミーナなのだが、ミーナであってミーナでない何か別の存在がいくつか意識の中にあったような気がした。
ハッと私は目を開けた。そこにはやはりミーナがいた。
「どうでしたか。私の意識の中は」
「どうやら信頼されてるみたいだよ。それと意識の中のミーナは大分とイタズラ好きみたいだね」
「うふふ、そうでしたか」
柔らかな笑みでミーナは応えてくれた。小悪魔的なミーナもそれはそれで可愛らしいがやはり私としてはこちらのほうがいい。そう考えていると、
「また今度、ルカワさんの意識の中を見せて貰ってもいいですか」
と、聞かれ、見せて貰った以上断る訳にはいかないので了承しておいた。
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