Story2 魅惑と困惑のアップデート情報
あの入社から1週間ほどたった。
僕とソラ君も仕事の感覚を掴み始め、これから本格的に仕事へと取り組もうというこの時期に1つのニュースが物資調達部に入ってきた。
「部長!部長!大変です!」
叫びながら我らが本拠地である屋敷に駆け込んできたのはアルケミストの葵先輩だ。
「先輩、部長は部屋にいますよー」
椅子に腰掛けて自分の短剣の手入れをしていたソラ君がそう言った。
短剣の手入れと言っているけど、実の所僕達はまだモンスターとの戦闘を経験していない。
つい2日前まで仕事内容についての話とこの街の施設について教えてもらっていたからだ。
部長が言うには次のイベントから僕達も参加出来るとのことらしい。
「マモル!ついにイベントが発表されたのかな!?」
「多分そうじゃないかな、葵先輩があんなに慌てる事なんて今まで無かったしね。」
「楽しみだなぁ〜やっと俺たちも活躍できるんだぜ。」
ソラ君は子供のようにはしゃいでいる。
けど、その気持ちもよく分かった。
実際に僕の胸の鼓動はさっきから早まるばかりだ。
2階から物音がして、葵先輩と部長が降りてきた。
「全員今やってる仕事を中断し、至急1階まで集合!」
部長がパーティチャットでそう言って長机の一番奥、部長の席に座った。
パーティチャットっていうのはその名前だけで察する人も居るだろうけど、この部の中なら誰とでも連絡を取れる機能だ。
しばらくして春野先輩が、その後にライ先輩とユイ先輩が帰ってきた。
「では!今回のアップデート情報を葵君の方から話して頂きます!」
全員が長机を囲み、会議が始まった。
「はい!まずは武器とジョブの調整ですが、ナイトのスキルである…」
黙々と会議は進んでゆく。
「…武器とジョブの調整は以上です!次はイベント情報ですね!
今回のイベント、私が思うに今までで最大級ですよ」
おぉー!とあちこちから歓声が上がる。
「まず今回の報酬ですが、[エデンの果実]というアイテムの先行入手となっています。
こちらの[エデンの果実]ですが、食べると100秒間全ステータス3倍という効果です」
僕以外全員の顔が固まった。
僕にはその凄さがイマイチ分からなかったので後で聞くことにした。
「そして、このイベントの概要ですが…今までに無い新しい形で……」
葵先輩が言葉を濁らせ、周囲の目が少し変わった。
「ズバリ言うとですね…宝探しとなっています。
運営から出された情報を元に[エデンの果実]を見つけるというのが今回のイベントとの事です」
「その情報は既に公開されてあるのかい?」
部長が尋ねた。
「いえ、まだですが、来月の公式生放送で公開になるとアナウンスがありました」
「なるほど、となると27日か…アップデート情報はこれで以上かな?」
部長が続けて尋ねた。
「ですね。今回の情報は以上となります」
「よし、とりあえず来月27日までは各自イベントに向けて対策すること!以上、今日の所は解散!仕事に戻ってくれ!
あ、ユイくんはこっちから頼みたい事があるから残ってくれるかな。あと新入り二人も!」
部長の宣言によって先輩方は仕事に戻った。
「ソラ君、[エデンの果実]って何がそんなに凄いの?」
ゲーム内で分からないことはとりあえずソラ君に聞くようにしてる。
わかりやすく答えてくれるし、先輩に聞くよりも気が楽だからだ。
「そうだなぁ、言うなれば産業革命みたいなものかな、今までバフをかけるアイテムって倍率が3倍の物はあってもステータスのうちどれかひとつかふたつを上げるくらいだったんだ」
今更だけどステータスは五種あって、攻撃、防御、魔力、魔防、速さの五種だ。
ステータスの上昇にはステータスポイント(通称SP)を振り分ける事で上昇させる事が出来る。
これらのステータスはこれからのジョブチェンジにも関わっていて、どれが高いかによってジョブチェンジ先が決定されるらしい。
「しかもそれを量産できるんだ、多分環境が一転するよ。良い方向か悪い方向かは分からないけどね」
パチパチパチと拍手が鳴り響いた。
「ソラ君、完璧な説明だね。その通り、僕らの頑張りによっては我社が強大な力を持つ事になる」
拍手の主は部長で気づくと部屋にはユイ先輩と部長と僕ら2人しか残ってなかった。
「で、ユイくんに頼みたい事なんだけどね、この2人の武器作りを手伝って欲しいんだ」
部長がそう言うとユイ先輩が
「そんなのお安い御用ですよ〜ファイヤドラゴン狩りですよね?」
「だね、じゃ頼むよ」
「アイアイサー!じゃあ二人共、善は急げだ。行くよ!」
そうして僕達はユイ先輩に連れられファイヤドラゴンの住む[フィアンマ洞窟]へと足を踏み入れる事になった。
入社した企業の勤務内容はVRMMOをする事でした。 はるる @harururu1127
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