Tutorial3 自己紹介の見本を見せてよ

「さて、まずは新入社員の二人!ようこそ、物資調達部に。

改めまして、私は部長の山田。気軽に山田部長と呼んでもらって構わないよ。」


白い甲冑に身を包んだ男性がまず名乗った。


「山田部長って…そのままじゃーん!」


僕を起こした女性が爆笑しながら突っ込んでいる。

僕ともう一人の新入社員は完全に置いてけぼりだ。


「ユイ君うるさい!そんなに言うなら、君が自己紹介の手本を見せてくれ!」


「はいはーい!

新入社員の二人、私はユイ。これでも私は回復職だから怪我したら是非とも私を頼ってね!」


ユイさんが言い終わると僕の右の席に座っていた男性が声を上げた。


「あぁー!ユイ先輩、回復職は僕ですよ!新入社員君に変な事刷り込まないでください!」


流石VRMMOの世界だ…現実世界じゃ職に就くのも一苦労なのに…

職を取り合ってる…

僕がつまらない事で悩んでいるとその男性が自己紹介を始めた。


「新入社員君!僕は春野。ジョブはクレリック、言う所の僧侶だね。さっきのユイ先輩よりかは回復が得意だから、僕に回復は任せてね。」


春野さんは聖職者が着るような白地にいくつか黄色い線が入ったローブを着ていた。

更に彼の椅子には杖が立てかけており、ファンタジー感を強めている。


「僕の自己紹介はこのくらいにして、次は君かな?葵?」


「そっか、もう私とライ先輩しか残ってないもんね。

私は葵です。よろしくお願いします!

職業はアルケミストで、回復薬とか作れます!

あと、アイテムとかに詳しいのでわからないものがあれば是非持ってきてくださいね!」


春野さんの隣に座っていた丸眼鏡をかけた小柄な女性が立ち上がり自己紹介を終えた。

葵さんは他の方と違い、白衣を着て現実の研究者とあまり変わらない服装をしていて少し安心した。


「最後はライ先輩ですかね?

よろしくお願いします。」


葵さんがそう言うとユイ先輩の隣にいたフードを深く被った男性が


「ライだ、職業はスナイパーだ。よろしく。」


それだけ言って終わった。


「ちょっとライライー!自己紹介くらいちゃんとしなよー!新入り君に怖がられちゃうよ」


「それがどうした」


ユイ先輩がライ先輩に注意しているのか…?

しかし、当のライ先輩はどこ吹く風だ。


「ごめんねー新入り君。ライライいつもこうだから…でもね、バトルの時は頼れるから!怖がらないであげてね!」


すると、僕の隣の人が笑いながら、


「大丈夫です!じゃあ俺から自己紹介してもいいですか?」


どうやらもう一人は結構グイグイ行くタイプのようだ。


「先輩の皆様方!俺はソラと言います!別アカではシーフ使ってたんで、ここでもシーフ希望です!よろしくお願いします!」


先輩達が口々に経験者か…などと話し合っている。


「じゃあ最後はマモル君だね!よろしく!」


ユイ先輩がそう言って皆さんの視線が僕に向いた。


「は、はい!僕は高橋マモルと言います!

このゲームをした事がないので職業とかはわからないのですが、よろしくお願いします!」


暖かい拍手が机を囲んだ。

パチパチといった音が止み、部長が


「じゃあ、一通り歓迎会も終わった事だし、一先ず解散!」


そう言い、先輩たちが次々に立ち上がり、外へと出て行った。

僕たち新入社員二人は何をすれば良いのか分からず椅子に座り尽くした。


「あ、二人はこっちね。色々手続きがあるから、とりあえず付いてきて。」


部長は僕たちにそう言って外へ出た。

僕らも追いかけるように外へと出た。


昼の日差しが僕らを差した。

通りは活気に包まれていて、道行く人の中には武器を担いでる人もいる。


この街で僕ら二人は少し浮いていたが、溶け込むのに時間はかからなかった。

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