エピローグ FINAL


 七月七日、ビスマルクのプレイ後にセンターモニターを見ていた天津風唯(あまつかぜ・ゆい)は衝撃のプレイを目撃した。そのプレイとは、何とセンチュリオンのプレイだったのである。


(彼女が動きだした? まさか)


 センチュリオンの別ネームかなりすましも考えたが、微妙な挙動を含めて本人ではないと無理な物があった。つまり、あのライブ中継で姿を見せたセンチュリオンは本物で間違いない。


(彼女が復帰したという事は、これが終わりであって始まりか)


 ビスマルクは、センチュリオンがヒーローブレイカーで復帰した事で一連の事件のトラウマから解放されたと考える。


【センチュリオン? 見間違いでは?】


【有名プレイヤーのなりすましは多いと聞くが】


【どうも、あれは本物らしい】


【どういう事だ? あの事件以降、彼女の姿を見た者はいないとSNS上でも――】


【どちらにしても、偽名で活動していた可能性も否定できない】


【偽名? センチュリオン程の有名プレイヤーであれば、即バレのはず】


 SNS上でも、動画の存在を含めて疑問に思うプレイヤーが多い。あれほどの有名人が今まで誰にも気づかれずに活動で来ていた事も、様々な部分で疑問が浮かぶだろう。



 草加市内のある場所にARゲーセンが存在する。そこは、ある意味でもレアなARゲームが設置されているレア名所だった。そこに彼女が姿を見せた事で、予想外の展開が生まれる事になる。


「あれは、まさか?」


「見覚えあるぞ。確か――」


 周囲のギャラリーがざわつくのも無理はないが、例のコートに深く被るフード姿、それは間違いなく彼女だった。その人物とは、センチュリオンである。これは、例のライブ中継が始まる数分前の出来事――。



 その中継を見て、驚かない人物がいるのだろうか? ほとんど無関係なゲーマーが存在を注視する中で、その中心にいたとされる人物が――。午後二時、彼女は遂にゲームフィールドへと復帰を果たしていた。


(やはり、そいういう事だったのね)


 別のゲーセンに設置されたセンターモニターでセンチュリオンのライブ配信を見ていたのは、照月(てるつき)アスカである。彼女も既にヒーローズブレイカーには復帰をしているのだが、センチュリオンに関して言えば初耳だった。


(始まるのか。自分達の新たなる戦いが)


 もう、かつてのような炎上と言う悲劇を避けるため、運営側もこれ以上にないような対策は行うだろう。しかし、実際に炎上するかどうかはプレイヤー自身のモラルにかかっていると言ってもいいかもしれない。だからこそ、照月はセンチュリオンの出現でパリピ勢力等が炎上させないか、それを恐れている。


「今度こそ、あなたに本当の意味でゲームの面白さを伝えて見せる!」


 照月の決意は揺るがない。利益優先で炎上商法と言う禁じ手に手を出すようなメーカーもある中、ARゲームメーカーは炎上商法がイメージダウンであると理解はしていた。だからこそ、今度は同じような悲劇は起きないと信じている。ヒーローブレイカーは、様々な人物の苦労の末に再起動したタイトルなのだから。



 その後、再始動したヒーローブレイカーがどうなったのかは――SNS上でも大きな炎上もない為、ヒュベリオンの計画は成功したのだろう。シナリオの変更は止む得ない箇所ではあったが、彼にとってはSNSにおける炎上商法や企業のイメージダウン狙いの炎上動画等を根絶させる為、この作戦を思い浮かんだのかもしれない。


 現実をみると、未だにそう言ったモラルのない人物による炎上発言などが、やはりというかSNS上に拡散している現実がある。だからこそ、ヒュベリオンはメタフィクションを含むようなARゲームのシナリオを考案し、ヒーローブレイカーを生み出したのだろう。


 もしかすると、こうしたSNS上の炎上が想像出来ないような経済損失を生み出すと考え、それに対策をするように警告をしているのかもしれない。


『これは一種のアカシックレコード、全てはSNS炎上を阻止する為に生み出された、もう一つのメタフィクションなのだから』


 ヒュベリオンに先見の明があったのかは定かではない。しかし、彼は現状の世界を見てSNSに飲み込まれ、全てを把握できなくなった人たちを変える為、このような役回りを演じたのだろう。


 もしくは、こうしたシナリオを生み出したのかもしれない。SNS炎上は経済損失を生み出し、何も得るような物は皆無であると断言する為に――。

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イースポーツオブサンダーボルト(正式版) アーカーシャチャンネル @akari-novel

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