第10話:五人目の仲間


 四月四日、この日は早朝に曇りだったのだが午前九時ごろには曇り空は消えていた。これ位の快晴だと、屋外系ARゲームも盛り上がるという物だろう。ヒーローブレイカーは屋内ARゲームのカテゴリーに該当し、屋外が雨であろうとプレイ不能になる訳ではない。仮に屋外版がプレイ不能になっても、VR版は天候に関係なくプレイ出来るのだが。


「AR版をプレイするのは後でも問題はなさそうだが――」


 アサシン・イカヅチはWEB上でも情報をいくつか仕入れ、VR版をそのまま進めても問題がない事に気付いた。AR版とVR版でマッチングが出来る仕組み等も書かれていたが、そこはどうでもいい。まずはAR版へ鞍替えしなくても問題はない事だけ分かればよかったのである。


(AR版は投資がかかるという話を聞く)


 AR版はガジェットやスーツ、その他で費用がかかるともサイトには書かれていた。ヒーローブレイカーではシステム的な関係でスーツは必須ではなく、ARメットも自前で用意する必要性はない。それでもガジェットは必要なので、最低でもガジェット代金はかかるだろう。ARガジェットはVR用でも使用が可能なので、買えれば応用は可能である。


(そう言えば、ARとVRでのマッチングって、どういう構造になっているのだろう)


 照月(てるつき)アスカは、マッチングの方法に関してどういう構造になっているのか――少し悩んでいた。ARアーマーが転送される原理でVRアバターをARフィールドに召喚しているような物かもしれないが、ゲームシステムは色々と複雑らしく詳細は不明なままである。


 唯一分かっているのは、一部のARゲームではVRアバターが現実にいるような感覚にする者が存在するので、それと同じシステムだろう――と言うのがまとめサイトの見解だ。下手をすれば、無人で動くようなロボットなどにも転用できる技術であり、危険な場所での活動も可能になるとはSNS上でも言及されている。しかし、その誰もがゲームの技術をリアルの分野に持ち込む事に疑問を持つ人物が多く、実現はしていない。イースポーツに関しての風当たりが一時期悪かった時代と似ているのだろう。


(マッチング? このタイミングで?)


 センターモニターの方にいたのは、秋月千早(あきづき・ちはや)である。彼女は他プレイヤーのプレイ動画を見ているうちに、別プレイヤーのマッチングしたと思われる中継を目撃した。その中継に映し出されていたのは、イカヅチの傭兵アバターだったのである。これには秋月も驚いている様子だったという。



 その一方でアシュラの件で動揺し、冷静な判断が出来ずに暴走している構成員が後を絶たないダークフォース。SNS上でも案の定炎上しており、そこで様々な事が書かれていたのは言うまでもない。


『炎上は他のアンチ勢力の仕業ではないようだが、どういう事だ?』


 ゲーセンの外でスマホを確認していたアルビオンは、この状況を飲み込めないでいた。アシュラ以外にも問題ユーザーは多数いたという事なのか? それとも別の事情で炎上しているのか?


【あの頭領も危険人物だな】


【あいつの発言は、どうしてもダークフォース軽視だ】


【芸能事務所のアイドルファンなのか?】


【このままではアシュラに続く問題が起こるぞ】


【それよりも問題なのはセンチュリオンだ】


【センチュリオン? それはフェイクニュースでは】


【フェイクではない。真実だ】


 コミュニティのタイムラインを見たアルビオンは、更に別の問題を発見する。それは、センチュリオンがダークフォースに加入した事だった。これには、さすがのアルビオンも言葉を失う程のレベルだった。センチュリオン自体はSNSでも危険人物として指定されているが、ダークフォースでこの名前を聞く事になる方が想定外と言える。

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