第6話 それは殺人罪になりますか

 ところでどうなんだろう? あたしがその時ふと考えたことだ。わからないことは上司に聞いてみるのが一番だ。

「そう言えば堂嶋さん、どうなんでしょう? もし、堂嶋さんが今夜あたしを襲って、あたしを妊娠させたとしたら、それは殺人罪になりますか?」

 堂嶋さんはその質問を聞いて少しむせ返った。変なことを聞いてしまっただろうか?

 少し間をおいてから、彼は相変わらず壁に向かって答えた。

「僕は、そのあたりの法律についてはよくわからない。だけど相手の同意が得られないまま相手を強姦し、妊娠させたのならば、それは殺人罪が適用される場合があるのかもしれない。無論、その場合生まれてくる子供のDNAを調べることで父親がその人物であるかどうかを確認する必要があるかもしれないし、とにかく時間がかかることだ。そうこうしているあいだに結果として子供を産まなければならなくなる。その場合、有罪が確定すれば食料になるのは父親の方だという判決になるかもしれないが、少なくとも誰かが死ななければならないという結論になる。

 あ、あの…… 言っておくが、僕は香里奈君を襲ったりはしない。だから、その……安心して寝てくれたらいい……」

「はい、大丈夫です。あたしも堂嶋さんに襲われるかもしれないなんて、これっぽっちも考えていませんから」

「そ、それは……喜んでいいこと……なのかな?」

「……でも、別にそういうことに興味がないってことではないんですよ。昔の本や映画なんかではそれがとても素晴らしいことだってよく言っているので、興味はあります。でも、それが命をかけてまですることなのかどうかはちょっと……」

「たしかにそれはそうかもしれない。時代が変われば考え方も変わってくる……か」

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