砂の伝説

作者 はとり

伝説が刻む、星の一秒

  • ★★★ Excellent!!!

古来より、人々は空想の物語――SFやファンタジーを求め、追い続けてきたといっても過言ではない。世界各地に伝わる神話や伝説の数々が、それを証明している。そしてその多くは、世界の成り立ちへの言及であったり、自らの生まれを探るものであったり、または古くからの戒めを説くというような、いわば「語り伝え」だ。これは人々が積み上げてきた「歴史そのもの」と言ってもいいだろう。本作品「砂の伝説」とは、そういった「語り伝え」の物語である。異世界ファンタジーの形式をとってはいるが、史実というものをひも解いてゆく、そのスタイルはまさに歴史であり、ありえたかもしれない神話そのものといっていいのかも知れない。

物語は、ほんの小さなきっかけによる、ある男女の出会いから幕を開ける。それは、ごくありふれたシンデレラストーリーだ。主人公に感情移入し、その小さな幸せを願ううちに、いつしか歴史の大河(この場合「胎芽」といってもいいかもしれない)に読者は飲み込まれてゆくこととなる。そこから描かれてゆくのは、世界が辿ってゆくことになる途方もない時間の涯てへの遍歴そのものだ。壮大なスケールの歴史が、絵巻のように次から次へと繰り出されてゆくシナリオは圧巻である。

と書くと、なんだか突飛なファンタジーものを連想するかもしれない――が、本作品は決してそうはならず、じつに地に足の着いた物語を徹底してゆく。
それは、その時代時代に生きる人々の目線から決してそれることはなく、かれらの生き様に肉薄してゆく叙事詩として書き表されてゆく。多聞にして寡黙な物語でもある。途中に、数多くの挿話を挟み、蓄積し、一つの星の歴史が紡がれてゆく様は、まさに読み手が歴史を見届ける神にでもなったかのような……そんな錯覚を覚える。これは、挿話に連続性を持たせる事に成功した、たいへん秀逸な構成といえよう。冒頭から順を追って通読した読者は、なおのことその感覚を強く味わえるに違いない。

紡がれている物語は、これを書いている現在は第三部の序盤である。間もなく佳境だろうか。数多くの伏線と、交錯する人間模様……歴史の蓄積が帰結しようとしている。それはまさしく「星の未来」そのものなのだ。

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