377:連れて行くんかぁあ〜いっ!

「長くもっても、あと二日ってとこだな」


カービィの言葉に、ブラーウンとアンソニー、その他この場にいる馬面人間達は驚愕する。

しかしながら、異論を唱える者はいない。

それほどまでに、目の前のラーパルは衰弱していて、もはや虫の息だった。


カービィによる応急処置が済んだ後、馬面人間達が力を合わせて、ラーパルを家の中へと運び込んだ。

ギンロとグレコとカナリーが作った木製ベッドは、それはもう豪華で豪華で……、この滅びかけの村には全くそぐわない出来栄えだった。

とはいってもまぁ、毛布は俺の使い古しだから、ちょっぴりピグモル臭が残っているものの、カナリーが何か魔法をかけたのだろう、新品同然のフワフワのピカピカになっていた。

このベッドでならば、ラーパルも良い最期を迎えられるに違いない……


「だから、今日中に白い悪魔とやらを見つけて、おまいらにかけた魔法を解かせ、ラーパルさんを町へ連れ帰る……。それしか救う方法はねぇっ!」


ふぁっ!? マジっすかっ!??


カービィの言葉に、俺は心底驚いた。

まさか、この状態の……、もはやいつ息を引き取ってもおかしくなさそうな瀕死のラーパルを、此の期に及んでまだ救おうと考えていたとは……

さすがはカービィ、白魔導師の鏡だなっ!!!


けど、今日中に白い悪魔を見つけるってそんな……

この森、結構広いんでしょ?

ちょっと無理じゃない??


「カービィさん、僕がラーパルさんに状態保存魔法をかけますので、三日……、いえ、四日はもつはずです。それだけの時間があれば、きっと白い悪魔という者を探し出せるはず。皆さん、希望を捨てないでください」


ベッドに横たわるラーパルを心配そうに見つめる馬面人間達に向かって、マシコットがそう言った。


状態保存魔法ってやつが、いったいどんなものなのかは知らないけど……

食べ物の賞味期限を伸ばすのとはわけが違うのだから、そんな事が本当に出来るのだろうか?


俺は訝しげな目で、ラーパルに向かって魔法をかけようとしているマシコットを見つめる。

そんな俺の視線なんぞには全く気付かずに、マシコットは杖と魔導書を取り出して魔法を行使する。

杖の先から、暖かなオレンジ色の光が放たれて、それは光のベールとなって空中に大きく広がり、横たわるラーパルの体をふんわりと包んだ。


……ラップですか? ねぇこれ、ラップだよね??


オレンジ色の魔法の光に包まれたラーパルは、それこそ、ラップにくるまれた馬肉だ。

俺は、なんとも言えない面持ちで、静かに眠るラーパルを見つめた。


「けれどマシコット……、その白い悪魔をどうやって見つけるつもりですか? 湖での目撃情報があるとはいえ、ずっとその場に留まって居るとは考えにくいですし……」


カナリーは、顎に手を当てながら考える。


「その事なら大丈夫よ。モッモがいるからね♪」


グレコが俺にウィンクする。


「え? ぼ……、僕??」


そんな、急に期待されても……

確かに俺は鼻が効くから、森の何処かにいる白い悪魔を探し出す事なんて超簡単……、なわけないだろうっ!?

会ったこともない相手なんか探せませんよぉっ!??


困惑する俺を、ついさっきまで笑っていたグレコが、ジトッとした目で睨んでくる。


そ、そそ、そんな睨まれ……、睨まれたってぇっ!?

無理なもんは、むむ、むむむ、無理なんだよぅっ!!?


「はぁ……。モッモ、あなたが首に下げている物は何だったかしらねぇ?」


……え?

俺が首に下げているのは……、あぁっ!?


「望みの羅針盤っ!!?」


そうかっ! これで探せばいいのかっ!!

毎度の事ながら、全く気付かなかったぜ俺ってばよっ!!!


羅針盤を手に、俺は心に強く思う。

白い悪魔はどこですかっ!?

……でも正直言うと、これっぽっちも会いたかないんですけどね。


すると、羅針盤の金色の針は、ブラーウンとアンソニーが立っている方角、西を真っ直ぐに指した。

この集落から更に西だということは……、当初の予定通り、タウラウの森の中心にあるヒッポル湖に向かう事になるな。


「西ね。どのみちそっちに向かう予定だったのだし、そこに白い悪魔がいるなら一石二鳥よっ!」


意気揚々と言い放つグレコ。


そんなに白い悪魔に会いたいのかね?

マシコットの話だと、その正体は邪術師とかいう、魔法使いの犯罪者だということだが……

本当の悪魔である可能性もまだ、無きにしも非ずなのだよ??

悪魔であれ、犯罪者であれ、出来れば関わりたくないというのに、もう……


「うむ。白き悪魔を倒して欲しいとのラーパル殿の最期の願い、我らで叶えて進ぜようぞっ!」


鼻息荒く意気込むギンロ。


最期の願いって……

ラーパルさん、まだ生きてますからぁっ!

勝手に殺しちゃ駄目ぇっ!!


「そうと決まれば、すぐにでも出発しましょう。まだ日没までには時間がある。暗くなってからでは、森の中だと身動きが取りにくいですからね」


マシコットの言葉に、俺たちは頷いた。


「だ……、だったら! 私も連れて言ってください!!」


そう言ったのはブラーウンだ。

馬面の顔を恐怖で真っ青にして、下唇をブルブルと震わせながら……


「ぼっ! 僕もっ!! ラーパルさんを助けたいんだっ!!!」


息子のアンソニーも名乗り出た。


二人とも、今にもちびりそうなほどビビりまくっている癖に、よくもまぁ言い出せたものだな。

その勇気だけは認めてあげよう。

だがしかしね、ここから先はおそらく、とても危険な旅になるのだ。

素人の君たちを連れて行くわけには……


「よし! じゃあ、おまいら二人も来いっ!!」


連れて行くんかぁあ~いっ!


おいこらカービィ!?

本当にいいのっ!??

この二人どう見ても……、俺並に足手まといだと思うけどっ!?!?


しかしながら、俺以外のメンバーは全員、二人を連れて行く事に納得したらしく、着々と出発の準備が整えられた。

元医者だという馬面人間にラーパルの看病を任せて、俺たちは帰れずの集落を後にした。


こうして、モッモ様御一行プラス騎士団のマシコット&カナリーの六人パーティーに、馬面親子のブラーウンとアンソニーが加わったのでした。

チャンチャン♪


……くぅ~、こんな馬面ぁ~、加えたくねぇえ~っ!!!

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