117:テトーンの樹の村復興計画!

「ガッハッハッハッハッ!!! いやぁ~しかし、儲かったのぉっ!? 久しぶりに良い仕事をした気分じゃ~!!!」


オーベリー村の小料理店にて、昼食を食べる俺とテッチャ。


「けど、驚いたよ……。まさか、こんな大金が手に入るなんて……」


少々青褪めた顔の俺。


テッチャがボンザに渡した、合計四十一個のウルトラマリン・サファイアは、総額3670000センスの値がついた。

三百六十七万て……、なんかもう、よく分かんないけど凄いや……

約束通り、取り分はテッチャと俺で半分ずつ。

つまり俺は、な~んにもしてないのに、1835000センスという大金を手に入れてしまったのだ。

グレコの父ちゃんから貰ったお金の残りを足して、俺の鞄の中には今、ざっと二百万ほどのお金が入っているわけだ。


ドワーフの洞窟を出てからというもの、俺は終始小刻みに震えている。

鞄の中に、今まで持ったことのないような大金を入れているのだ、緊張感からか変な汗が止まらない。

おそらく前世でも、こんな大金を手元に持った経験などない、はず……

誰かに鞄を引ったくられやしないかと、大事そうに膝の上に鞄を乗せて、片手でギュッと強く握っているので、俺はまともに食事が出来ない。


「ん~確かに大金じゃろうが、あの大粒が売れれば、もっと大金が手に入るぞぉ~?」


ニヤニヤと笑いながら、昼間から酒を煽るテッチャ。

まぁ、テッチャはかなりお酒に強いようなので、飲んだ後の事に関しては、さほど心配はしてない。


テッチャが最後に取り出した大粒のウルトラマリン・サファイアを見たボンザは、テッチャの誘いに意図も簡単に乗った。

なんでも、正規ルートではない売買方法があるらしく、そちらの方が高値で売れるとかなんとか……

あの大粒のウルトラマリン・サファイアは、正規ルートだと一つ五百万くらいだそうだが、テッチャの言っていた裏ルートだと倍になる可能性があるとかないとか……


なんていうか、別に正規ルートでいいんじゃない? って正直思ったけど、金に目の眩んだ二人の前で、それを口に出す勇気は俺にはなかった。

まさか、こんな事になるなんてな。

なんかもう、世の中怖い、お金が怖いわ……


「ほんでじゃモッモ、相談なんじゃがな?」


「え……。まだ何かあるの?」


「……んな怯えた顔せんでもええじゃろが」


だって俺、今、何もしてないのにこんな大金を持ってるんだよ?

俺は最弱種族のピグモルで、根っからの怯え体質なのだ。

そんな俺に、こんな大金を持たせるテッチャが悪いんだから。


「村を栄えさせる話なんじゃがの。とりあえず、この村で買いたいもんがあるんじゃ。昼飯を終えたら、買い物に繰り出すぞ!」


「あ、うん……。何買うの?」


「うむ。実はの、こういうのを作っての」


そう言って、テッチャは自分の鞄の中から、何やら手帳を取り出して、中を開いて俺に見せた。

そこにはデカデカと、《テトーンの樹の村復興計画!》と書かれている。

……別に、何か災害に遭ったわけでもないし、廃れているわけでもないから、復興っていうのはちょっと違う気がするんだけど。

まぁ、ともかく、そこにはいろんな計画が事細かに書き込まれていた。


「何これ? すごいね、全部テッチャが考えたの??」


「おおよ。やるからには、本気で挑戦したいからのっ!」


テッチャはニカっと笑って、キラーン! と頭を光らせた。






-----+-----+-----


テトーンの樹の村復興計画!



○その1○


村に井戸を作る。

毎日ピグモルたちが小川まで水を汲みに行くのは大変。

予想では村の地下には地下水が流れているはず。

井戸を掘って、ピグモルたちの生活を楽にしよう!



○その2○


プレハブ小屋の建設。

グレコとギンロのための宿泊施設。

さすがにテントと野宿は可哀想。

村のすぐ南にある平地に、プレハブ小屋を二軒建てる。



○その3○


畑の増設。

テトーンの樹の村から南へ下った場所に広い平地有り。

そこなら、これまで以上に広大な畑が作れる。

ここにも井戸を作る。



○その4○


ダッチュ族たちの家を増設。

卵がもうすぐ孵るため、今の家だけでは手狭になる。

二階建てにするか、隣にもう一軒建てる。



○その5○


わしの家の改築。

隙間風と雨漏りを防ぐために、町で煉瓦と藁を買って改築したい。

できれば羽毛布団と、頑丈な金庫も欲しい。



-----+-----+-----






「うん、いいと思うよこれ」


ざっと目を通して、頷く俺。

次のページには、具体的に何がどれくらい必要なのか、資材の種類と数なども記載されている。


「じゃろう? 昨日おめぇが連れてきたバーバー族の家も必要じゃろうからの、少し多めに資材を買っておきたいんじゃ」


「うん、そうだね。けどこんなに沢山、いろんなもの……。この村に売っているのかなぁ?」


「ん~、まぁあるもんだけ揃えりゃええ。足りないもんは、また先の村で探してくれ! そう急ぐ話でもないからの」


「うん、わかった! あ、でも、バーバー族たちの家なんだけど……。彼らは木の上に蔓で編んだ丸い巣を作って暮らしてたんだ。だから……、小屋とかは住みにくいんじゃないかなぁ?」


「ふむ、そうか……、昨晩は村の広場で雑魚寝しとったがの。さすがに卵を持っておったからの、ずっと雑魚寝はよくねぇじゃろう。しばらくは我慢してもらうしかないのぉ。蔓で編んだ丸い巣のぉ……。ちぃと考えてみるの!」


「うん、よろしく!」


「んで、その復興計画に使う資材の代金なんじゃがぁ~」


「……わかってるよ、ちゃんと僕が払うからさ!」


「おおっ! そうかそうか!! ガハハハッ!!! 余計な心配じゃったかっ!?」


「さすがに、そんなとこまでテッチャのお世話になれないよ。それに、こんな大金、サッサと使いたいしね」


「んん? そうなのか?? ならば、遠慮なく、資材を買わせて貰う事にするかのっ!?」


上機嫌なテッチャは、グイッと酒を煽った。


俺は、とりあえず、この鞄の中に入っている大金が少しでも減るならと、内心ちょっぴり安心した。


もう一度、手帳に書かれた復興計画に目を落とす俺。

三ページ目には、まだ書きかけであろう、復興計画のその6やその7がある。

それらを目にした俺は、これからテトーンの樹の村がどんな変貌を遂げるのだろうかと、心をウキウキさせていた。

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