114:名探偵カービィですか?

「百聞は一見にしかず! 手っ取り早く、この魔道鏡で、おいらを見てみろっ!!」


……ふむ、では覗かせていただきます。


「生物はみな、知らず知らずのうちに、己の体内から力を放出させているもの。その放出された力を感知、測定し、数値化できるのがその生体測定魔道鏡であるっ! ちなみに、体力は白、魔力は赤、霊力は青、神力は黄色にて、放出されている様が確認できようぞっ!?」


ふ~ん、なるほどな~、って……


「ねぇ、何にも見えないんだけど?」


「おっ!? やはり壊れたのかっ!??」


俺から魔道鏡を受け取って、再度俺を覗き見るカービィ。


「んん? おいらには見えているぞ?? ……あっ! すまない、モッモ」


「どうしたの? やっぱり壊れてた??」


「いや、その……。魔道具は魔力のある奴しか使えないんだった」


……は~い、残念でした~!

俺は魔力ゼロの無物でした~!!

畜生めぇえぇぇっ!!!






以下は、魔道鏡が使えない俺のために、カービィが紙に書いてくれた、みんなの生体測定結果である。


-----+-----+-----


グレコ


ブラッドエルフ AAA


体力:340P

魔力:140P

霊力:0P

神力:0P


-----+-----+-----


ギンロ


フェンリル(パントゥー)A


体力:930P

魔力:220P

霊力:0P

神力:0P


-----+-----+-----


カービィ


マーゲイ AAA


体力:120P

魔力:670P

霊力:0P

神力:0P


-----+-----+-----


モッモ


ピグモル SSS


体力:50P

魔力:0P

霊力:840P

神力3P


-----+-----+-----






うん、なるほどな。

こうやって見てみると、意外と納得する数字だな。

グレコよりもギンロの方が魔力が高いのは意外だ。

それに、なんだ?

俺のとこのにある、神力:3P って……?

なにこの、申し訳程度のポイント……??


「たぶんこれは、神の使者だからじゃないかなぁ? けどほら、おいらたちはゼロだし、たぶんそういう事だと思いま~す」


なるほどねぇ~。

テッチャの測定結果がないのが残念だけど、カービィがテッチャに興味を持たなかったので仕方がない。


しかしまぁ、物の見事に無駄だったわけだな、俺の長年の努力は……

体力、50Pって……

女のグレコよりも遥かに低いとは……


「……ねぇ、この数値ってさ、上がったり下がったりするの?」


「もちろん。だけど、生まれ持った性質の方が大きく関係しているって、何かの論文で読んだな」


……じゃあやっぱり駄目じゃんか。

仕方ないっちゃ仕方ないか。

旅に出ていて忘れていたけど、俺は世界最弱の種族、ピグモルなのだ。

体力が50Pしかない、ピグモルなのだ。


……うん、なんかこれ見ると、神様の言う通り、あまり無茶せずに行こうって思いましたよ。


「この際だから聞いちまうけど、モッモ、おまいさん、他にも他者と違う部分があるだろう?」


「……え、何、体力のこと?」


「違うよ、体力は結構ある方だよ、ピグモルにしては」


……マジかよ。

みんな、どんだけ体力ないんだよほんと。


「おまい、転移か転生したんだろ?」


……え、今なんと?


「……今、なんて言った?」


「だから、おまいさんが、別の世界から転移、あるいは転生してきた者かって、聞いたんだ」


……なぜ、バレている?


神様に選ばれてこの世に生を受けたこと、前世の記憶があることは、グレコにもギンロにも、その他誰にも言っていないことだ。

なぜだかこれだけは言ってはいけないような、言っても信じてもらえないような気がしていたもんだから。


なのになぜ??

なぜにカービィにバレている???


「モッモ、これが何かわかるか?」


そう言って、カービィが取り出したのは、小さな懐中時計だ。

銀製のその時計には、綺麗な若葉模様の細工が施されている。


「それは……、時計、だよね?」


「そう、時計だ……。だけどモッモ、なぜこれが時計だとわかったんだ?」


「え、だってそんなの……、えっ?」


「そうなんだよ。おまいさん、この村の出身だって言う割には、妙に物知りだろう? 時計なんざ、この村にあるはずがないし、オーベリー村にもない。エルフの村にでもあるのかと思ってグレコさんに聞いたが、彼女はこれが何かわからなかった。つまり、モッモ、おまいは知っているはずのない時計を知っている。それは、別の世界から転移してきたか、あるいは転生してきたか、そのどっちかになるとおいらは考えてる」


うわ~お……

まさかまさかの、名探偵カービィですか?

頭が良いのはわかっていたし、頭がおかしいのも知っているけど、まさかここまで洞察力があるとは思ってなかった。

……と言うか、俺のガードが甘かっただけっていう可能性もあり得るけど。


「話したくない気持ちもわかる。転移や転生を経験する奴は、大概訳ありな奴が多いからな。おいらの知り合いにもいるけど、前の世界でえらい目にあったらしいから」


「……え、僕の他にもいるの?」


「……やっぱりそうなのか??」


ああっ!? しまった!?? 俺としたことがぁっ!???

頑張ればまだ誤魔化せそうだったのに、自分からバラしちまった!!!!!


カービィは、逃がさないぞ! という、狩をする時の野生の肉食獣のような目で俺を見る。

こりゃもう、本当の事を言うしか、ないか……?


「えと~、その~……、どこから話せばいいのかわかんないけど。僕はとりあえず、前世の記憶、別世界の記憶を持ってます。だけど、なんだろうな……。思い出とか、経験談とかじゃなくて、ただの知識って言うか……。あんまりこう、具体的な事は何も覚えてないんだ。自分がどういう人間で、どんな人生を送っていたのか~とか、さっぱり覚えてない」


「ふむ……、なるほどなぁ~。けど、案外その方が幸せなんじゃないか? 前世の自分と今の自分を比べずに済むだろう??」


いや、比べたりはした事あるんだけどね、体力とか、体力とか、体力とか……


「そっかぁ、じゃあやっぱり、モッモなんだな」


「……何が?」


「おいらがこれから一生一緒にいる奴」


「……え? ……僕は、そっちの趣味はない」


「違うよっ! 一緒に旅をするってこと!!」


あぁ、なるほど、そういうことね……、え?


「なんでカービィが? 僕と一緒に旅を??」


「うん……、話せば長くなるんだが……」


「え、じゃあいいよ、また今度で」


「聞けよっ! そこは聞いてくれよぉっ!! モッモぉおぉぉっ!!!」


……うぅ~、本当はもうかなり眠いんだけどぉ~。


こうして俺は、眠る事さえ許されずに、カービィの昔話を聞かされる事となったのだ。

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