第10話 魔物追加
クロークロウを駆除したものの、まだ問題は残っていました。どこで魔物が発生したのかということです。あのような飛行系の魔物は対策をしていないと街の塀を越えて街に侵入してきます。ですので街には魔物除け結界が常に張られています。ですのであのカラスは街の中で魔物化したことになります。
私はまずクロークロウが発した瘴気をたどることにしました。瘴気は半日でただの魔力に変化してしまうので急がないといけません。ギルドの備品の瘴気探知機で現場を調べます。しかし、ごみ捨て場には瘴気が残っていますが、その周囲では瘴気が検出されません。
「飛んできたから周囲に残留していないのでしょうか」
私はスキルを発動しました。
『探知機さん、空中の瘴気は検出できますか。鳥の魔物の追跡をしたいのですが』
『できますよ。ただ、この辺りではごみ捨て場にしか瘴気がないです』
『半日以上ここに居たということですか』
『それは僕の知ったことじゃないです』
動物が魔物化するほどの瘴気だまりは見つからず、クロークロウがどこから来たのかはついにわかりませんでした。
ギルドに帰ると、エルーシャが机に突っ伏していました。周囲の書類の山が崩れて頭が埋まっています。返事がない。ただの屍のようです。
「死んでないよ!」
エルーシャが体を起こしました。崩れていた書類の山がさらに崩れます。
「整理くらいしたらどうですか。いらなくなった書類を捨てるとか」
「掃除めんどくさい」
「汚いですよ」
「掃除できれいにするのって汚れを雑巾とかで集めてるだけで、汚れの総量は変わらないと思うんだ」
「書類の整理には関係ないですよねそれ」
「ううっ、トラブルとか起きませんように。仕事が増える……」
「大変だ! 郊外にトレントが発生したぞ!」
ギルドに男性が飛び込んできて叫びました。早速トラブルのようです。
トレントは、瘴気に強くさらされた植物が魔物化したものです。瘴気を濃く内包しているため強く、Bランクに分類される魔物です。もちろん発見されたら即討伐対象です。
街のすぐ近くに強力な魔物が発生したということで、戦闘ができる冒険者には強制依頼が出されました。ギルドにいない冒険者でも、高ランクの方には連絡員が飛んでいきます。
私は冒険者を引き連れて現場へ急行しました。
現場は郊外のごみの埋め立て地でした。最近ごみが埋められたと思われる、土肌がむき出しの場所にトレントがいました。
ベースとなったのがツル科の植物らしく、ツタがうねうねと揺らめいています。あれに巻き付かれたら厄介そうです。
「火魔法が使える方は攻撃を、それ以外の方は攻撃のサポートをおねがいします」
私は方針を出していきます。現場に集まった冒険者は約30人。戦闘中に指示しきれない人数なので、方針を決めた後は各自で判断して行動してもらうことになります。
「それでは、攻撃開始!」
私の号令で一斉に魔法が放たれました。トレントの周辺で火が上がります。しかしトレントも黙ってはおらず、ツタを伸ばして攻撃してきました。魔法が使えない冒険者はそれを斬り落として後衛を守ります。
私も参加しましょうか。そう思った私はある物を手にしました。スリングショット、分かりやすく言えばパチンコです。撃ち出すのは安い火属性Eランク魔石。私のスキルで「燃焼 LV1」スキルを付与します。
『逝ってください』
私はトレントの幹に向かって魔石さんを放ちました。
『ばんざーい!』
魔石さんはそういいながら幹に命中しくいこむと、スキルによって火を放ちました。トレントが体内から燃やされます。
私は続けて次弾を打ち込んでいきます。スリングショットに付与した「命中 LV1」のおかげで全弾命中しました。
しかし、ツタを斬っても斬っても再生され、トレントからの攻撃が止まりません。火のほうもあまり効いていないようです。どうにも火力が足りなさそうです。
トレントが葉っぱを飛ばしてきました。どうやら刃物になっているようで、当たった冒険者が傷を負います。葉っぱの弾幕が私たちを襲いました。
「うわっ」
私は近くに居たアンさんのバリアに逃げ込みました。念のため彼女の近くにいてよかった。
バリアの外では冒険者の方たちが盾などで必死に葉に耐えています。切れ味が悪いらしいのが幸いし、なんとか重傷者は出ていないようです。
撤退すべきか考えていると、街の方から誰かがやってきました。どうやら誰か増援に来たようです。
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