ごみ編

第9話 ごみ事情

ごみ編全4話、開始です。

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 皆さんこんにちは。マリーンです。ここ冒険者ギルドヨハン支部は今日も大忙しです。私の机には書類が山脈を形成しています。これでは仕事ができません。私は机を整理することにしました。


 私は不要となった書類をまとめると、ギルド裏のごみ捨て場に捨てました。ギルドでは解体された魔物など多くのごみが廃棄されます。そのためギルドの裏にはごみ処理場があります。


 ここでこの町のごみ事情を話しておきましょう。ごみはまず街のあちこちにあるごみ捨て場に捨てられます。ごみ捨て場に集まったごみは、業者の手によって街に数か所あるごみ処理場へと運ばれます。金属など再利用できるものは回収され、それ以外はそのままもしくは灰にして郊外に埋められます。


 ちなみに汚水は下水に流され、下水処理場で浄化されてから放流されます。これらの活動によって私たちの街の衛生は保たれているわけですね。


 冒険者ギルドでも衛生管理は重要視されています。あちこちにごみ箱が設置されていますし、定期清掃も行われています。


 特に魔物を解体する解体場は毎日清掃がされています。最近は瘴気清浄機という魔道具が設置され、魔物の死体からもれた瘴気による被ばくの軽減も行われています。森の瘴気量と比べれば微々たる量でしかないのに過剰に問題視されているのは、衛生観念が行き届いた弊害でしょうか。



「マリーン、ちょっといいか?」


 解体場配属の鑑定士、ギミーさんが声をかけてきました。


「なんですか」

「瘴気清浄機の魔石が切れたんだ。補充してほしいんだが」


 魔道具は魔石に蓄えられた魔力で動きます。


「分かりました。風属性の魔石でしたよね」

「ああ」



 私は近くの店で魔石を購入すると、解体場にやってきました。


「おお、来たか。こっちだ」


 ギミーさんが手招きします。そこには空気の出入り口が付いた箱が鎮座していました。これが瘴気清浄器です。


 私は魔力が切れて黒くなった魔石を、新しい黄緑色の魔石と交換しました。清浄機が動き出します。しかし、なんだか動きが悪い気がします。


「どこか悪いのでしょうか」


 私は清浄機を点検しました。すると、空気の入り口のフィルターが埃と油で詰まっていました。汚らわしい。


「汚物は消毒です」


 フィルターを洗って取り付け直すと、清浄機は正常に動きました。これでよし。私は洗った水を下水に流し古い魔石をごみ箱に捨てると元の業務に戻りました。




 なんとか書類の山を片づけたころ、ギルドが騒がしくなりました。受付のほうで何かあったようです。


「何かあったのですか」

「街の中に魔物がでた。クロークロウらしい」


 クロークロウは魔物化したカラスです。発達した足のかぎづめで人の腕くらいならへし折ってしまう、Dランクの魔物です。なぜ町の中にいるのかはともかく、早く駆除しないといけません。



 私はギルドで冒険者を募ると、目撃された場所へと急行しました。そこはごみ捨て場でした。ごみを散らかしながらエサを探す、足が大きいカラスが見えます。間違いなくクロークロウです。


「まずは逃げ場をなくしましょう。アンさん、お願いします」


 私はCランク冒険者のアンさんに指示を出しました。彼女は無属性魔法の使い手です。アンさんはうなずくと、杖をカラスに向けました。


「ネット」


 アンさんが詠唱すると、ごみ捨て場が網状のバリアで覆われました。驚き逃げようとするクロークロウですが、ネットに阻まれて逃げられません。


「ヨシムさん、仕留めてください」


 続いて私が指示を出したのは、Dランク冒険者のヨシムさん。彼の火魔法で焼き鳥にする作戦です。


「まかせろ」


 ヨシムさんが杖から火を放射しました。クロークロウが火に包まれます。これで終わりです。


 パリーン!


 と思ったらクロークロウがネットを破って飛び出しました。そして鳴きながらこちらに襲い掛かってきます。掴みかかってきたクロークロウが空中で止まりました。アンさんが張り直したバリアに阻まれたのです。


「くらえっ!」


 ヨシムさんが炎弾を放ちました。クロークロウに命中して爆発します。クロークロウはバラバラになって死にました。


 こうして私達は駆除に成功しました。

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