59、ブレヒドゥン(その二)
ジャルディーンに転移後、ホルサの案内に従ってガウェインのところまで行く。
さすがに大国ジャムヒドゥンの元首都、街も宮殿もでかい。
宮殿にはいってから、かなり歩いた気がする。建物に入って二~三分あればどこでも行けるうちの政務館とは大違いだ。
でも、宮殿なんかに金をかけるのは好きじゃないからいいんだけどね。
ガウェインが待つ部屋へ俺達は到着し、ホルサの説明を聞いたガウェインは事務方を呼んでヴァイスと協定の原案作りを指示した。まあ、ヴァイスが納得して出してきた原案なら俺の方はそのまま通すだろう。あとはガウェインが納得するかだけだ。
俺とガウェインそしてホルサは別室で雑談を交わしながら原案ができるのを待つ。
「ガウェイン殿は撤退戦は得意ですか?」
ヴァイスとアロン達と話し合って考えた、リエンム神聖皇国と新ジャムヒドゥン連合との戦いで必要な対応について聞いてみた。
「撤退戦は得意と言っていいか判りません。ただ防御戦は得意ですので、事前に策を練っておくなら苦手とは感じませんが」
対リエンム神聖皇国連合のプランをガウェインとホルサへ大雑把に俺は説明する。
目的はキュクロプスの打倒とヨセフスの新ジャムヒドゥンを徹底的に叩くこと。
できるなら、ヨセフスの新ジャムヒドゥンは滅ぼしてしまう。そうすればブレヒドゥンとガイヒドゥンが恐れる二正面作戦を恐れることもなくなるし、俺達が求める対応に必要な時間も稼げる。
「つまり、リエンム神聖皇国のキュクロプスは死地に連れ出し、一方でヨセフス等を挟み撃ちにするということでしょうか?」
「その通りです。率直な話、キュクロプスがフォモール族と同じような弱点を持っていたら、この戦いは既に勝利していると言えるでしょう。ですが、キュクロプスがフォモール族と違った場合でも、ヨセフスの軍だけは殲滅の憂い目に遭うことだけは約束できます。キュクロプスも撤退せざるをえない案も用意しています」
本音で言えば、キュクロプスを俺が相手してしまえば楽勝なのだが、この戦いのあとブレヒドゥンが体制変更に必要とする時間を短縮するために、ブレヒドゥンには少し苦戦してもらおうと考えているのだ。苦戦しても被害を減らすためには、ガウェインの率いる軍には撤退しつつ戦って貰う必要がある。被害を抑える案は既に用意しているから、ガウェイン等が案に従ってくれればそれでいい。
キュクロプスを撤退させるのは、キュクロプスではなく、その背後のリエンム神聖皇国軍を叩けばいい。うちには空戦部隊があり、上空からピンポイントでリエンム神聖皇国軍を叩くことが可能だ。キュクロプスは戦闘神官第四位のアイアヌスが指揮しているとバックスとネクサスから聞いている。ならばアイアヌスが前線に留まっていられなくすればいい。俺達の対キュクロプス対応方針はアイアヌスへの対処ということで決まっている。
石化魔法が通じるなら、この際キュクロプスも叩いておくんだけどね。
ガウェインに全て教えることはないが、ブレヒドゥンの被害を抑える方策だけは打っておきたい。
「もしヨセフスを叩いて新ジャムヒドゥンを滅ぼしたなら、彼の地をどうするおつもりですか?」
ブレヒドゥンとガイヒドゥンが土地の奪い合いする可能性もある。ここはきちんと確認しておきたい。
「逆に、貴国は彼の地を欲しないのですか? 豊かな土地ですよ」
「要りません。ルーカン殿にも説明しましたが、国というのは大きくなりすぎると内部から争いが生まれます。それは避けたいのです」
「なるほど、耳が痛い話ですな。ではゼギアス殿ならばどうしたら良いと考えます?」
「他国の勝手な意見ですので、そのつもりでお聞き下さい。ホルサ殿が今の領地を捨てて、テムル族の領地を治め、ブレヒドゥンとは別の国を作り、その上で三国で連合を、相互不可侵協定を結ぶ。もしどこか一国が他国へ戦争をしかけるようなときは、残りの二国とサロモン王国がその国を攻める、というのはどうでしょうか?」
”内乱の鎮圧も三国で協調すればどこかだけが負担が大きくなることも防げます”と付け加えた。テムル族の領地をホルサが治めるとなれば当初は荒れるだろうから、その対応も三国ですべきと伝えた。
「つまり、テムル族ヨセフスには息子が三名居ますが、その子等には引き継がせないと?」
「いえ、三国が四国になっても構いませんが、私の見たところ、テムル族はあまりに戦闘的で息子の代になっても性格が変わるとは思えませんでしたので三国でとしました。ですが、そこはガウェイン殿等がお決めになればいいと思います」
中途半端に領地を奪われるよりは、完全に併合して領主そのものを変えたほうが良いと思うが、俺が決めるのではなく士族間で決めるべき話だと思うから、そこは任せたい。
ヴァイス達が協定の原案を持ってきたので、俺とガウェインは確認した。
俺はそのままで問題なしと通し、ガウェインも同様に了承した。
これでブレヒドゥンとも協定を結ぶことになり、まず、ヨセフスの新ジャムヒドゥンを叩くところから始めることになる。俺とヴァイスは準備のために、ルーカンのところからホルサの息子たちを連れて一旦サロモン王国へ戻る。
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