Bonus trackⅢ【設定資料 ※ネタバレ注意】

□第三部「BLACK Side-B-(一から四)」


※視点は「トーさん」目線。




※時系列は「導入章」より更に四年前の話。


旧友・黒石から一本の電話が入る……。「鏑木市の駅前『竜門口』に来て欲しい。美味しい話があるんだ」と。就職難にあっていた蘇芳(すおう)はそのまま、待ち合わせ場所に足を運んだのだった……。




□人物紹介


●冬野 蘇芳(ふゆの すおう 20代後半 ※27歳?)


・愛称「すーりゃん」


「トーさん」での本名である。この章では「すーりゃん」と呼ばれている。大学時代の学友「黒石 彰」に誘われ、「土地売買・譲渡詐欺」に加担してしまう。ペーパーカンパニー「ドーベルマン」の会計補佐役を務める。「鏑木経済大学」出身。塾講師の経験あり。家が貧しいのを知っていたのか、「詐欺で得たお金の三割」を黒石から譲渡され、使い道を「私」の為に利用することにする。




●黒石 彰(くろいし あきら 20代後半?) ※偽名:岩村 昭(いわむら あきら)


サイコパス気味な、蘇芳(すおう)の大学時代の学友。病んでいるようだ。起業するためにお金が必要だと、蘇芳に甘い誘いを持ち掛ける。詐欺の経歴は前歴があったようで、慣れた手つきでお金を騙し取っている。ペーパーカンパニー「ドーベルマン」の代表取締役を務める。詐欺の後の消息は不明。 ※(株)クロイシ・ペットビジネスの企業者。




●唯我 忠護(ゆいが ただもり)


・愛称「ただやん」


※無神論者 日榮(にちえい)の子孫。


弁護士で、黒石 彰の友人である。蘇芳(すおう)とは初対面だった。彰(あきら)とは就職活動の際の、先方の面接のグループディスカッションで会う。そして、呑み友として彰と友人付き合いが始まったようだ。法学部出身であることを、彰に明かし、彰に気に入られているようだ。弁護士を目指しており、法律に関しての知識が長けている。法務整理を基本的に行い、蘇芳と共に事務処理をしていた。「詐欺で得たお金の三割」を黒石から譲渡され、使い道を断られるも、柚木(ゆずき)のもとに何度も押しかけて、「秋月家の残りの家族の為」に利用することにしている。




●ペーパーカンパニー「ドーベルマン」


 老いて莫大な財産を残して他界しようとしている老人の土地売買を手伝う会社(と言う名目)。「跡継ぎのない老人」と「家を建てる為の土地が欲しい若者」の仲介者となり、仲介手数料で設ける。代表取締役は「岩村(黒石)」、会計補佐は「冬野」、雑務や法務整理を「唯我」が担当した。




運営方針は名目上こうである。


①老人から七割~五割の額で土地を買い取る。


②土地を若い世代の家を建てたい人に譲る。この際、仲介手数料として「100万円」頂く。


③サブビジネスとして、施工業者の紹介や、メンテナンスなどのアフターサービスを紹介し、加入することで利益を得ていく。




※「蘇芳が計算した『正規の』利益」


①高野老人から1500万円の土地を七割から五割の額で購入。


→買い取った額は500万円(三割値)だったが、端数を切って1000万円(六割五分)でも利益が見込める。


②売買契約を結び、若い人に「時価総額」の八割の値段で売る。


→1,000万円(1,500×0.66)で購入した土地を1,200万円(1,500×0.8)で売る計算になるので200万円の利益が見込める。これに「仲介手数料」を100万円頂くので、会社側にとっては300万円の利益。土地購入者にとっても、1500万円の土地を1300万円で購入できるので、充分メリットがある。




〈詐欺から破滅への流れ〉


①秋月 常盤(あきつき ときわ)に目を付けた彰は、常盤の家に「土地を安く譲ります!」と言うチラシを投函する。そして、チラシを捨てようとした柚木を制し、常盤が「ドーベルマン」をインターネットで調べ、単身契約に行く。


②簡易オフィスに彰が案内し、お茶を出しながら、写真と物件の良さを説明する。そして土地を抑えるための前金が必要だと話を進める。(この時に提示したのは100万円)。


③土地を案内し、一通り見せてから、老人に挨拶させ、信頼を得させる。


※老人からは前もって、土地を「かなりの安値」(時価1,000万円の土地を半値で)で譲ってもらってある。その内訳を常盤は知らされていないが、時価総額を安く売ることだけ、伝えてある。


④「これで安心ですね」と彰は、常盤に言う。安心しきった常盤は、家族に大口を叩く。それが自分の首を絞めることになる。


⑤土地が高騰したので、常盤に「もう少し前金が欲しい」と頼み、更に200万円振り込ませる。


⑥土地売買の残りの金額800万円を(一部はキャッシュで500万円 ※前金300万円と、貯金から200万円貰っている)をローン(月払い5万円/13年払い)で組む。そのローン会社も彰の手中である。


⑦家を建てるための費用や大工を紹介する。そして「完成のした家の写真」を見せ、常盤と柚木を安心させる。お金が足りないので彰のローン会社からお金を借りる常盤。


⑧家が完成したので800万円(内仲介手数料100万円)欲しいと申し出る。お金が足りないので、更にローンを借りる常盤。(月払い5万円/26年払い。常盤の年齢を考えると、返済は70歳。そしてこの時点での借金1,600万円にまでなっていた)。


⑨そして、実は建っていた家と土地は二重契約が交わされており、土地も家も、回り回って、彰の手元に戻ることが分かる。本文にはないが、自殺した常盤の様子を見ると、家族が相当悩んでいた様子が分かる。常盤と柚木は途方に暮れるが、重過ぎる現実を、子どもには話すことが出来なかったようだ。この二重契約は、取り交わした後に、忠護が蘇芳に話す形で知らされた。


※損失額は貯金500万円、借金1,600万円。


⑩常盤は働き疲れ、四年後に自殺してしまう。後に唯我 忠護(ゆいが ただもり)が分けてもらったお金(七百万円)を返しに来ていたようだ。そして債務整理をしてくれた。しかし、柚木は「命は戻ってこない。どうしてくれるんだ!」と泣きながら怒る。そんな柚木を、彼は説得しながら債務整理を進めていたようだ。




●高野 老人


住まいは森城町だが、鏑木市の方に土地を持つ老人。高齢で、視力と足腰が弱っている。お金持ちだが、身寄りがなく、信頼のおける人に土地を譲ろうと思っているようだ。ただ、良い人に手渡したいと思っている。彰には時価1500万円の土地を、500万円で土地を手放したようだ。


※参考:「安曇野島内1500万円の土地 151坪」


:http://www.azumino-inakagurashi.net/tochi/1104/




●黒石 彰が使用したもの。


・取引通帳(三千万円を出し入れしたもの)


・ペーパーカンパニーの名刺


・プリペイド携帯(捨て番号)


・土地登記簿


・二重契約書(但し書きが小さめに書いてある。:『この物件を(甲)は以下の所有者(乙)に譲渡します』『但し、甲は、乙に対して、物件の損害や個人的信用を損なった場合に於いて、売却の権利を棄却します』等)




□秋月家・土地&住宅ローン詐欺(導入章から、おおよそ四年前)


亡き父「秋月 常盤(あきづき ときわ・当時30代)」は。マイホームを建てるべく、一生懸命にお金を貯めていた。頭金500万円を元手に、2,000万円の土地と家を買おうと決意していた。そして妻・柚葉(ゆずは)と家族と一緒に夢を見ていた。しかし主犯・黒石 彰(くろいし あきら)の二枚舌と共謀犯、冬野(ふゆの)、唯我(ゆいが)の犯行によって、架空の土地と物件を売りつけられてしまう。四年間借金を返済していたが、家族に対するプレッシャーと過労によって、自分を見失ってしまい、睡眠薬を飲んで自殺してしまう。主犯の黒石 彰(偽名・岩村 昭)は名前を変えて、(株)クロイシ・ペットビジネスを経営している。


↓モデル記事


https://www.nikkei.com/article/DGKDZO62786210Z11C13A1CC1000/




●「住宅ローン詐欺の首謀者と共犯者」


〈冬野蘇芳(トーさん)の手紙より。:「蒼白の月夜Side-A-:第五部」より〉




 同居人のお前へ。


 妹さんに俺の素性がばれ、生きていく気力もなくなったので、鏑木市の出会った港で死ぬことにしました。


 今まで怖くて離せなかった、俺の過去をここに記しておきます。


 俺は小さい頃、兄弟の多い貧しい家庭の子どもでした。そんな兄弟の長男だったからこそ、両親や兄弟への愛情は妬ましく、大人になってもそれは変わりませんでした。俺がお前さんのお父さんを騙してしまったのは、今から八年前のことでした。


 俺には「黒石 彰」と言う頭のいい友人がいました。黒石は、人一倍頭の回転も速く、世論に対して不満を抱いているような難しい男でした。悪だくみもし、その気になれば、世界征服をしてしまえるようなそんな男でした。


 なにを考えているか分からない男でした。黒石は大学時代に知り合った「唯我 忠護」と言う男を連れてきて、会社を立ち上げたいと言いました。


 俺はそのとき無職でした。正直、金が欲しかったので、必死に立ち上げた会社で、唯我と働いていました。その会社は、老人から土地を買い、その後若い人に売るというビジネスでした。


 ある日、秋月 常盤さん、つまりお前のお父さんに当たる人が家を建てたいと言って会社に来ました。俺は笑顔で応対し、たくさん常盤さんと話していました。そして、黒石はうまく常盤さんを丸め込むと、ローンを組ませて二千万円近くの大金を常盤さんから騙し取ってしまったのです。


 詐欺の計略は割愛しますが、俺のこともすっかり信頼してくれていた常盤さんが騙されて、契約書にサインするとまで思っていませんでした。黒石は俺と唯我の前に分け前としての金を置いて、そのまま、姿をくらましてしまいました。


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