第92話

予報通り、昼頃から夕方にかけて強い夕立が降り始めると、グラウンドで部活動をしていた野球部員たちは早々に活動を切り上げて帰宅していった。


まるで大気を洗い流すかのように降り頻る夕立の音は、蝉の鳴き声や吹奏楽部の演奏をも掻き消して部室内によく響く。そんな中、プラネタリウム制作は予定通り順調に進み、投影機の方はほぼほぼ完成に近づいた。



夕立が過ぎてからは、葉原から提案された花火を購入するため、部員全員で学校近くのコンビニへと赴いた。雨が降った後ということでアスファルトは黒く湿っており、普段よりも一段と蒸し暑く感じる。それでも、汚れを洗い流された木々はより蒼く輝いていて、葉を伝って落ちる雫には、夏の陽光が煌びやかに映し出されていた。心なしか空も真新しいものに見えて、今夜は昨日以上によく星が見えるように思えた。


コンビニで手持ち花火と夕食に使用する食材を少し購入すると、足早に学校へと戻り、早速夕食の準備を始めた。


そんな、気になる今日の夕食は話し合いの結果、朝食用に炊いておいた米がまだかなり余っていたため、コンビニで足りない食材を買ってカレーライスを作ろうということに決まった。そうして、普段家で料理などしない俺は女子部員2名に指示されながら調理以外の雑務をこなし、2人の手際の良さもあって1時間ほどで今晩の夕食が完成した。


早速いただいてみると、これがまた旨い。

市販のルーを使っているのだから、誰が作っても同じような味になるのだろうが、それでも自分たちで作ったものというのは普段の何倍も旨く感じる。

そして何より、白月と葉原が意外にも料理経験が豊富だということに驚いた。2人とも、普段の生活からは全くイメージできないが、実は家庭的なところがあるのかもしれない。


そんなことを考えながら夕食を食べ終えると手早く食器を片付け、昨日と同様天体観測の前に入浴を済ませることにした。


今日は俺が先に風呂をいただけることになったため、バッグから着替えやバスタオルを取り出すと、俺はそのまま白月と葉原に部屋の見張りを頼んで浴場へと向かった。


脱衣所で服を脱ぎ、タオル片手に浴場への扉を開けると、俺は洗い場のバスチェアに腰を下ろして頭と体に付いた汚れを泡と一緒に洗い流す。そうして自分の体が清められていくのを感じた俺はバスチェアから立ち上がり、浴槽へ向かって足を進める。


ふと浴槽に張られた湯を覗き込むと、澄んだ湯に自分の顔が薄っすらと反射して映った。


どうやら俺たちが本校舎で活動をしている間に、管理人が湯の張り替えをしてくれたらしい。俺1人のために、わざわざ湯の張り替えをさせてしまったことを申し訳なく思いつつ、俺はその真新しい湯に足を潜り込ませる。


そうしてゆっくりと肩まで湯に浸かったところで、真上に見える高い天井のさらに先、白い星々が瞬く濃紺の夜空に向かって、静かに長い息を吐き出した。

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