第37話
相変わらず薄暗い部室内には、人の気配を感じさせない寂しげな雰囲気が漂ってる。
俺は白月に続いて部屋の中へと入ると、部屋の中央に位置する4人掛けのテーブル席に腰掛け、部屋の中を見回しながら白月に尋ねた。
「なぁ、部員集めたりしないのか?」
「……少なくても、自発的に誰かを部に誘おうとは思わないわね」
白月は部屋の一番奥の窓際に立つと、外からの光を遮るカーテンを勢いよく開きながら、そう口にした。
カーテンが開くと同時に、薄暗かった部室内に柔らかな光が差し込んでくる。
俺は埃の被ったガラス棚や年季の入った木製のテーブルを、陽の光が静かに優しく照らしていくのを見ながら口を開く。
「でも、ずっと1人ってわけにもいかないだろ。お前はいいのか? このままでも」
うちの高校の規則として、部活動では最低3名の部員がいなければ部として認められない決まりになっている。
遅くても、次の生徒総会までに部員を最低あと2人集めなければ、天文部は部として認められず廃部となってしまう。
白月もそれについては十分理解しているはず。それなのに何故、白月は自分から積極的に部員を集めようとしないのか。
その理由がなんとなく分かるようで分からない、そんな輪郭がぼやけてはっきりとしないもどかしい気持ちを払うように白月が答えた。
「無理に誘ったところで、長続きはしないでしょうから」
そう言う白月の瞳には、ほんの少しだけ寂しさが宿っているようにも見えた。先月、天文部を退部した2人の生徒のことを思い出しているのだろうか。
理由も告げられず、まるで何かから逃げるかのように部員が退部していくというのは、置き去りにされる方から考えるとかなり辛いものがある。
きっと白月は、もうそんな思いをしたくはなくて、そんなことを言っているのだろう。
と、そんな風に思っていると、白月は窓から見える中庭の景色を眺めながら言葉を続けた。
「それに、本当に部の活動に興味があるなら、そのうち向こうからやってくるはずよ」
「そういうもんか?」
「そういうもんよ」
打てば響くように白月は答える。
でもまぁ、これは白月本人の問題であって、これ以上俺が余計な口出しするようなものでもないだろう。俺はこいつの保護者でもなければ、特別親しい友人ってわけでもない。
そう考えて自分自身を納得させると、俺は部屋の壁に貼られているポスターをぼんやりと眺めながら話を切り替えた。
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