第21話 UP BEAT(アップビート)

 皆さん、UP-BEAT《アップビート》ってご存知です?僕、メチャメチャこのバンド好きなんですよ。


 これはまだ僕が中学生時代に仲の良い友達を、歌が上手いからボーカル、君はモテるからギター、ガタイがいいからドラムと、取り敢えず自分がベースをやるために、片っ端から声をかけ始めた頃にさかのぼります。とにかく誰も楽器なんか持ってなくて、いきなり壁にぶち当たります。何をやりたいとか、誰のコピーをしようとか全然考えてなくて、取り敢えずメンバー集めてからと思って、まず楽器が無くてもできるボーカルから探すのです。

 すぐそばにいました。そいつはツーマと申しまして、とにかくB'zが好きで、歌が上手い。英語のところも歌えるし、声をかけれたら「やる!」というので次に探すのはギター。ギターはとにかく男臭くてカッコいい楽器なイメージがあるので、幼馴染のタカちゃんに声をかけるのです。タカちゃんは、モトクロスやスケボー、エアガンとか、お兄ちゃんの影響で男臭漂う趣味をいっぱいお待ちで、そこに絶対「ギター」も加わっていいのではないかと口説くのです。最初は嫌がってたタカちゃんも、「じゃあやってみるかな」と渋々OKしてくれたのでした。


 でも問題はドラム。ドラムって場所もとるし置く場所に困りそうで、しかも他の楽器よりちょっと高いし。なにせ、ドラムってる前は、なんか手も足も動かすし、できそうにない!と思ってしまう。ドラムやれる人って、小さい頃からやってた子は吹奏楽部の女の子で、当方モテたい理由で始めているバンドに女子は考えられない、と男で探すがなかなか見つからない。


 しかし、いた!ついに発見!リンという渾名の友達が、いつも最新のゲーム機やモデルガンを持っていて、背が高くガタイが良い、絶対ドラムだ、とどうやって口説いたか覚えてませんが、取り敢えずあれやこれや言ったんだと思いますが、3人掛かりで口説いてようやく4人バンドメンバーが揃ったのです。


 その頃うちの車庫は、2階が物置になっていて、そこを練習スタジオ(音は外に漏れ漏れ)にして、ドラムセットを置く場所が出来たので、早速みんなで楽器を買いに街へ。その頃VIVA楽器という通販の物を扱っている比較的安い楽器屋さんがあり、学校の用務員さんにリアカーを借りて、持ち運んだのを覚えてます。

 しかし、そのリンは、練習開始してすぐに、「やっぱり俺ムリ。ドラムは置いて行くから、俺辞めるよ」とすぐに去っていってしまうのでした。その直後に「なになに、お前ら。バンドやってるんだって?」と僕らのスタジオ(僕のうちの倉庫)にナオキがやってきて、もうみんなでドラム叩かせて、「お前凄えな、初めてなのに8ビート叩けるのか!」とかなんとか言って、誰でも8ビートくらい叩けるのにおだてて調子に乗らせ、メンバーに引き入れるのでした。そのナオキは後に、「俺はあの時お前らに騙されてドラム始めたけど、本当は歌手になりたかった」とEXILEでシュンが抜けた時のオーディション、TAKAHIROが合格したあのオーディションにB'zのOceanで挑み、見事に落ちて帰ってきました。


 しかしなぜ最初に声をかけたのがリンだったかというと、彼がお金持ちだったからでも、ガタイが良いからだけでもなく、彼が聞いている音楽がいつも皆んなが知らないようなのを聞いているからでした。それを普通に聞いている彼が、なんかちょっと大人な感じがして、よくCDを貸してもらいました。


 前置きが長くなりましたが、その中にあったのが、アップビートのサードアルバム『HERMIT COMPLEX』だったのです。彼曰く、「吉川晃司のCOMPLEXと間違えて買った」そうで、「でもカッコいいよ」と貸してくれて、ジャケットを見ると5人組でルックスがカッコいいのですが、聴くといきなりやられました。1曲目の「ディアヴィーナス」でやられました。また3曲目の「ドライフラワー」は今まで聴いたことないような曲調で(まあ中学生の頃は何聴いても感動しまくってたような気がしますが)。このアルバムも飛ばす曲がない!今でも思い出した時に聴きたくなるアルバムです。

 しかも、借りてたCDなのに、彼に「ヤバイこれ、頂戴頂戴頂戴」とおねだりして貰ったCDなんです。(なんかのCDと交換したのか、千円くらい払ったのか忘れてしまいましたが)リン、今でも聴いてるよ。


 そこで次に出たアルバム『UNDER THE SUN』も買うし、またハマるし。そしてファーストアルバム、セカンドアルバムも買い揃え、雑誌にアップビートが出てれば買うし、ベースの水江慎一郎さんがスタンドカラーのシャツ着てれば真似して似たようなの買ってくるし。終いには、僕の中での中学生の頃の2大バンド、アップビートとグラスバレーから文字を拝借して、バンド名を「BEAT VALLEY」と名付けまして(今思うとダサい)。


 5枚目のアルバム、ベストアルバムの『HAMMER MUSIC』に新曲が2曲入ってまして、その1曲目「レイニーバレンタイン」の時にアップビートが「夜のヒットスタジオ」に出演した時、ボーカルの広石武彦さんは、司会者の加賀まりこさんに、「あんた、京本政樹の弟に似てるわね」と言われ、どしていいのかわからなく「あ、ありがとうございます」と答えてたのを未だ覚えます。ネットで「京本政樹・弟」で調べると柳沢慎吾さんが出てきてしまいます。


 このベストアルバム後に、ベースの水江慎一郎さんと東川真二さんが脱退し、3人での活動になってしまうと、今までの曲調と変わりアメリカンロックな感じが強くなります。その後1995年に解散、僕が高校卒業とともにアップビートも終わってしまうのですが、2010年に、広石武彦さんと水江慎一郎さん中心にまた結成するんですね。んんー、1回ライブ見てみたかったな。


 僕は水江慎一郎さんの少々トリッキーな動きのベースも好きだったし、広石武彦さんの低い声も好き。とにかく服装やなんやかやのルックス的部分に最高に影響を受けたバンドであります。

 でもやはり1番気になるのはギタリストの岩永凡いわながひろしさん。この人のギターは、アルバム毎変化し、アンビエントな時もあれば、ゴリゴリのアメリカンハードロック風な時もあり、ボブディランのようなフォークっぽい搔き鳴らし系の力強い時もありの、なんでもできちゃうギタリスト。絶対今も活躍しててもおかしくないとは思うのですが、現在の活動は謎です。(僕が知らないだけかも)。


 長髪にバンダナ巻いたりとか、民族っぽいアクセサリーとか、ルックス的にもかなり影響受けました。


 アップビートは僕の青春ど真ん中に聴いてきたバンドで、未だに聴くと、くすぐったいような甘酸っぱいような変な気持ちと共に、このバンドをやり始めた頃の記憶がセットで蘇ってきます。


 バンドでデビューするぞと思っていた時期、その時こんな感じになりたかったバンドの1つであります。なんかこう「キュン」と胸が締め付けられるみたいな思いは、いくら古いバンドでも洋楽だとあんまり感じません。今聴くと、ちょっと歌詞がダサいところもあっての、邦楽。そんな自分も40を過ぎ、青春を思い出しつつも、今でも聴ける最高のバンドです。


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