77. Requiem to the past

 このたび、普段とは別名義でこの本を出版することとなり、正直驚いています。

 ……伝える必要があると弟は言いましたが、どうにも自分としては恥ずかしい部分を吐露しているようで……(特に、妻との馴れ初めについて書いている部分などは、何度か没にしようと提案したこともあります)。


 けれど、ここに書いたことは紛れもなく伝えることに意味がある内容だと分かっています。……オカルト系列の作り話だと思うのなら、それでも構いません。普段から作り話で食ってる身ですしね。


 過去に向き合うことは恐ろしいことでしたが、必要なことでした。過ぎ去ったものに別れを告げ、新たな道筋を作っていくことができたことを、奇跡のように思います。

 もっとも、奇跡と呼ぶには失礼なほど、血と、涙と、汗によって得られた機会でしたが……。


 各々、異なる道を歩む多くの魂のため、この本を捧げられたらと思います。


 過去に、安らかな眠りを。

 現在に、穏やかな時間を。

 そして、どうか未来に、幸多からんことを。




 2018.11.15

 Roderick Anderson (PN.Light Walker)




 ***




 原稿を書き終わり、大きく息をつく。この作者コメントみたいなのは、どうにも慣れない。……そもそも、自分のことを書くの自体が好きじゃない。

 この作品も、本にするにあたって一部削ったところだってある。さすがに恥ずかしかったり、見せたくなかったりすることも山ほどあった。……まあ、全部は削れなかったし、ロバートの努力を思えば、なるべく忠実に残したいとも思ってはいる。


「お疲れ、ロッド」


 ふと、肩に手が置かれる。……優しい声音が、頭の上から降ってくる。


「……ん、ありがとう」


 振り返って、その唇にキスをひとつ。

 ……触れた温もりに涙が零れそうになる日々は、まだ当分続きそうだ。

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