第十二話 感情と妃麗欄
パッションルーラー そのⅠ
粒磨はこの日の放課後、職員室の横の部屋に呼び出された。
「何の用ですか?」
まず、部屋に入って来た妃先生に聞いた。
「あなたの行動には、目に余るものがあります。一体何人の生徒先生と喧嘩をすればいいのですか?」
学校側としては、非行に走る生徒を見て見ぬふりなどできない。だから教師を代表して、妃先生が粒磨を叱る。
「何がいいでしょうか。あなたへのペナルティです。課題にしましょうか、それとも内申点をどっさりと引きましょうか?」
粒磨は両方とも首を横に振った。
「でも、聞いてくださいよ。俺が吹っ掛けた喧嘩じゃないんですって! 俺は自分の身を守っただけです! それに…」
自分だけペナルティが生じるのは不公平だ、と粒磨は続けたかった。だが妃先生がそうさせなかった。
「静かにしなさい!」
妃先生は粒磨の頬を引っ叩く。ビタンと音が鳴った。
すると粒磨は、黙り込んだ。
「よく聞きなさい。あなたが感じるべきは、落ち着いた怒りなのです。冷静かつ、燃え上がりなさい。そして自分の犯してしまったことに対して、償いをしなさい。そうすれば、許してあげましょう」
「…具体的には、何を?」
粒磨が指示を仰ぐと、
「あなたは超能力者として、とても強力です。これは既にわかりきったことですので、それを利用します」
「と言うと?」
簡単なことです、と妃先生は前置きを言い、
「あなたが負かしてきた生徒を全員、私の前に連れ戻してきなさい。そして彼らを改めて洗脳します。私たちの計画は大きく修正しなければいけませんが、その第一歩をあなたに行ってもらいます」
普段の粒磨なら、この指示には大反対をしたのだろう。だが彼は、否定意見を述べなかった。
「任せて下さい、俺に」
と粒磨は返事をした。
「今日中にも、全員をあなたの元に連れて来ましょう」
そう言うと粒磨は、ドアを開けて部屋から出て行った。
「頼もしい者です、味方に置けば」
妃先生は他に誰もいない部屋で一人、喋る。
「洗脳の仕方には、二通りあります。一つは狩生平汰のように記憶を書き換えること。ですがもう一つ…私の場合、感情を操れる。人は感情を操作されても洗脳されてしまう。それこそマインドコントロールというものです。私がこれを行うには、直接相手に触れる必要がありますが…。ですが一度術中にはまれは、自力で抜け出すのはほぼ不可能。これで粒磨を倒さずに味方にすることができる」
妃先生が表立って狩生先生に指示を出さなかったのには、理由がある。それは最後の要である自分の存在を、感づかせないためだ。
それが功を奏した。粒磨は妃先生を警戒することなくこの部屋を訪れ、そしてその超能力を受けた。
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