インドミナスエクスプローション そのⅡ

 俺は後ろにジャンプした。同時にマッチは、地面に落ちる前に爆発…。

「忘れてたぜ。マッチ棒は頭に火薬がついてんだよな。だから爆破させることができると?」

「そうだ。冴えてるじゃないか」

 普通、そんなこと起きないだろうよ…。だがそういう経験を、この島に来てから何度もしてきた。もはや驚く意味すらない。

「だけどよ…。水は爆破のしようがねえよな。むしろ火を消すのに使われんだしよ!」

 だから鍵下は、俺の水をくらったが最後、終わりのはずだ。

「…かもな。もっともそれが、俺に届けばの話。現実には起こらない」

 言うなコイツ。なら!

 衝三にやって見せたアレを行う。ウォーターガンを鍵下の背後に出して撃つ。

「スピードなら、俺も負けてないぜ? お前は爆発物を投げないといけないが、俺は水鉄砲のトリガーを引くだけでいいんだからよ!」

 トリガーに指をかけ、引こうとしたまさにその時。

 ウォーターガンが、バチバチという音を出して、火花に包まれていく…。

「なに?」

 急いで水を撃とうとしたが、意味がなかった。トリガーを最初に、爆破されている。そして大きく爆発すると、それは無意味なプラスチックの塊に変わった。

「何をした、鍵下! プラスチックが火を噴くはずがない!」

 鍵下は振り向くこともせず、

「この手はお前、三回目だな。最初が三久須真沙子。二度目が二頭衝三。そして三度目が俺。当然、後ろは警戒して当たり前」

 その考えは、わかる。だがウォーターガンが爆発した理由がわからない。

「…だから、何だって言うんだ?」

「予め、自分の背後に火薬を。お前からは見えないだろうが、空気中に散布しておく。お前の切り札の、ウォーターガンが出ればそれに集合するようにしてな」

 そういうことか…。ウォーターガンが爆発したんじゃない。火薬が爆ぜたんだ。ウォーターガンを包んで爆発…密着したものが無事で済むわけがない!

 しかも鍵下の超能力は、点火させるために火を起こす必要もない! 火薬の類なら、いつでも爆破できるこの超能力…。物騒で済めば軽いもんだ。


 俺はまず、間合いを取る。近づきすぎると、マッチ棒の爆発に巻き込まれる。一度水に浸かるとマッチ棒は、点火させることは不可能になる。だが、不安要素がある。そのために俺はあることを試してみた。

「隙あり…。目に見えるように持っているから、狙いやすいぜ!」

 マッチ箱に見事、水は当たる、これじゃあ中身は水没しちまったな。全て使い物にならなくなったはずだが。

「意味がないな。ならばこうすればいい」

 鍵下はマッチ箱を上に投げた。すると、やはり爆発する。音を立てて、箱と棒の残骸をまき散らしながら。

「確かにマッチは、頭に火薬が含まれている。水に触れるとそれが溶け出してしまう。だったらその水が蒸発してしまう前に、爆破するだけの話」

 不安が的中した…。


 点火させる必要がないから怪しいと思っていたのだが、やはりか…。火薬が水に浸っても、爆破はできる。火がつかないだけで火薬としての性質が失われてないから。これが鍵下の超能力。濡らせば無力だと思っていた俺が愚かだった。アイツが用意する爆発物は、濡らしても平然と爆発できる。

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