ドリームドロー そのⅡ
「絵に描けるのならYO、こーゆーのMO、ありなんだZE!」
衝三がスケッチブックを開くと、いきなり光った。
「な、なん…!」
反射的に俺は、横に飛んだ。そしてスケッチブックのある一ページから、ギザギザの稲妻が俺に向かって走っていた。飛んでなければ、直撃していた!
「絵か…。一見すると弱そうだが、何でも描けるという点に目を向ければ、最強だな…」
これは油断できない。衝三のスケッチブックには、何が何枚描かれているのかわからないからだ。稲妻のようなものもあるのかもしれないし、さっきのような動物もあり得る。
俺は、衝三の足元に向かって水を撃った。狙ったのは足ではない。その少し先だ。そこにはサソリが一匹、歩いていた。
「また、だな…。稲妻は本命じゃなかった。その小っちゃいサソリが、頼みの綱だったんだろ? サソリは小さい方が毒が強いって聞くしよ、毒はなくても針はいたそうだしな」
俺が言い終わると、タイミングを見計らったかのように頭の上に衝撃が走った。
「何だ?」
俺が上に向けて水を撃つと、それに当たったらしく、俺の目の前に落ちて来た。
「鳥だと…? 本命はサソリじゃなかった…?」
「粒磨YO、俺に勝てると本気で思ってんのかYO? 同じ手GA、二度も通じてるZE!」
油断させられた…。衝三、コイツは思ってたのよりすっと強い…!
だがいくら強くても、弱点はあるはずだ。そしてそれは、あのスケッチブック! アレさえなくなれば、衝三は攻撃手段を失うことになる。水の球で撃ち抜くか、水の刃で切り裂くか。近づいてパイロキネシス焼いてやるってのも、あるな。
まあ何をしようにも、こんなに離れてたら何もできない。
俺は衝三の行動全てに注意しながら、距離を詰めた。
「近づいてくるってことHA、やはり狙いは俺のスケブKA?」
衝三も警戒してくるな。ならば狙いを変えてみるか。
俺は水の球を堂々と作り出し、撃った。目標は衝三の胴体。威力に物を言わせて、押し出してみる。
「そうはいかねえZE!」
スケッチブックを開くと、白と黒の煙が出て来た。同時に、俺の水の球が消えた。
「何をした? 水を一瞬で消す煙なんて、存在しないはずだ」
「煙だっTE? 違うNA。これは炎だZE。お前の水ってYO、千度を超える炎相手JA、蒸発しちまうんだったよNA! もっとも俺MO、熱さはどうしようもねえかRA、開きっぱなしってわけにはいかねえSHI」
これが炎だと? そう表現したいんなら、頼むから赤で描いてくれ。
「だがこれでわかったRO? お前の弱点HA、全部俺の頭に入れてあRU。それを前もっTE、スケブに描いておいTA!」
やはりあのスケッチブックを攻撃するべきか…。
しかし俺の弱点って言うと…他に何がある? 何に苦戦したっけか…。真沙子の炎には確かに苦戦したし、あの時は雨が降らないと勝てなかったのは事実だ。だが他の超能力者には、実力で勝った気がするが…。
急に、突風が吹いた。
「風が! 強い!」
俺の足元をすくわれそうになる。それぐらい強い風が急に。
「風ってのはNA、昔の人間ってばYO、巨人が息を吹きかけているって考えてたんだZE。もっとも俺にHA、風の描写ぐらいわけないがNA!」
この風も、衝三の仕業か。
まいったな…。風が吹いてると、水は空気抵抗のせいで真っ直ぐ飛ばせない。空飛との戦いでわかったことだ。
「弱点を突くのは、卑怯か? それとも正攻法か? きっと立場で変わるんだろうな…」
俺からすればズルいことだが、衝三からすれば当然の行為。
「だがよ、俺は負けないぜ。お前が堂々とそれをしてくるなら、俺も胸を張ってできるからな!」
もうスケッチブックだけを狙う。水鉄砲を両方構えると俺は、水の球を二つ飛ばした。回転してらせんを描く。回転の勢いが強いので、神が吹いてるとかいう風なんてへっちゃらだぜ。
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