161:マルゲリータピザを、食べに行こうって。
次に彼に会ったのは、年が明け、彼の受験が落ち着いたころでした。
梅雨なんか、とっくに去って。夏を、秋を、年を越え。
真冬でした。あの日はたしか、寒かった気がします――。
どういう経緯で、またどういう建前で理由づけで誘ったのかは、よく覚えていません。
ああ、たしか、ツイッターでやたらピザを食べたい食べたいと言い合っていたのかな。
マルゲリータピザ。向こうが好きだといったようなツイートに、私のほうが過剰反応したんだっけか――。
ともかく受験直後の彼を、当時ほかのコミュニティでかかわりのあった人も呼び、三人で会いました。
当時の私はどうにも自分のコミュニティをまとめて、一元化したいという傾向が、非常にありまして。
当時の私に言わせればそれは、人間関係の最大効率化だったわけですが――まあ、このへんは若さですね。いまも人間関係は下手ですけど、当時のほうがよりやばかったってことで、そのへんはまたほかの機会におはなしできれば、と思います。
渋谷かどっかで集合し、カラオケに行き、自由が丘のおしゃれなピザ屋さんでピザを食べました。
後輩くんとカラオケに行くのはひさしぶりでした。相変わらず歌がうまい。声も低い。「やっぱ後輩くん歌うまいよねえ、声いいし」と私は率直な感想を素直に言ったのですが、同行した人が後輩くんに「イケボって言ってるみたいだよ? 言われると微妙な気持ちになるよね」みたいな声かけをしてて、私もイケボイケボ―とか便乗した気がしますが、なんだか砂を噛んでしまったみたいで、ざらりとした気持ちになりました。
夜には自由が丘に移動し、いちおうもともとの目的通りマルゲリータピザを食べましたが、なんとなくその印象は薄いです。けっきょく、マルゲリータピザ以外のピザで空腹を満たしていたような気もします……。
ぽつぽつ、と話をしました。
後輩くんの志望校や、受験状況のこと。まだ受験が終わったばかりで、結果などは明確ではない、みたいなことを聞きました。
私はそのときには二十歳になっていたので堂々とお酒を飲んでいました。後輩くんはまだそのとき十九歳だったわけで、なんかそのへんのこともやたらネタにしておしゃべりをした気がします。先輩風を、吹かせたかったのでしょう。びゅうびゅうに。
でも、なんだか、それだけでした。
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