150:「自分を、理解できるひともいるのかもしれない」

 そのことを、後輩くんに伝えました。

 その場で、わりかし、そのまま。

 この曲を聴くと、後輩くんのこと思い出すんだよねえ、と――。



 後輩くんは、はあ、そうなんですか、って感じでただ私の話を聴いていた気がします。

 その場で、そのCDを借りたかどうかは……どうだったのでしょうか。覚えては、いないのですが。



 しかし、後日。

 彼は確実にその曲を聴いてくれたようです。



 歌詞的に、とくに、始まりが。

 なんだか意外と、ほんとうに彼の核心をついていたようでして。



 驚いた、らしいです――あるいはその言葉が適切なら、なのですが。

 自分自身のだれにも見せていない、見せられない、すくなくともそのとき見られてはいなかったはずのところを、

 たぶん、もしかしたら、私はその曲を通じて、見ていた。見てた。




 私は、正直なところ、すごく軽い気持ちで、「だって後輩くんってそういうひとじゃん」ってなことで、「π」の話をしたのですが――それは、彼にとっては、



「自分を、理解できるひともいるのかもしれない」



 と、いう、衝撃として、心の奥底へと落ちていった話なのかなあと思います――いえ、それは、いろんなことを総合して考えたときに、たぶんそういうことなのだろうと捉えた私自身の表現でもありますが。

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