142:一年間、ほとんど会いませんでした。でも、印象的なことはたくさんあって――。
彼が十八歳から十九歳に、私が十九歳から二十歳になるその年は、ほとんど会いませんでした。
彼は浪人生で予備校通いの日々でしたし、私は精神の不調が極まっているときで入退院を繰り返しているような日々でした。
それぞれ違う意味で、でもある意味おなじく余裕がなく、頻繁に会えなかったのでしょう。
……いや。もしかしたらそれ以上に、この時期は彼が、いちど会ったら「そうですねえ、また次の季節ごろに」みたいな感じで言ってきたから、でしょうか。
もちろん、忙しいのもあったのでしょう。もちろん。
でも、もしかしたらそこにはなんらかの、忙しいというだけのシンプルな理由以外のなにか、なんだろう、彼の心理的距離感みたいなのがあったのかな――とも、思うのですが。
結果的にはよかったと思います。
私は、当時、だれでもいいからよりかかりたかった。
後輩くん相手であってさえ、いちどたくさん会うようになってしまえば、私はたぶん確実にもたれかかりたくなっていたでしょう。そのことを防げたのは、あるいはたまたまかもしれませんが、ほんとうに結果的によかったと思います。
あるいは。彼にとってのそれはなにか「けじめ」だったのかもしれませんが――関係性においての。
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