76:その女の子はきらきらとこっちを見つめてくれたのですよ。
けっきょく最初どう出会ったのかは、具体的にはもうおぼろげです。
私も緊張していたのでしょう。なにせ中学生相手です。自分自身の中学生のときのやわさを高校生の私はとても覚えてました。高校生を、どう見ていたかも。しかも女の子です。
だから――部活で男子部員にやっているようなノリではいけない、と思いました。もっと、繊細に、ふるまわないと。
文芸部や演劇部にも中学生はいました。が、「中学上がり」の高校生と元々交流があって、その流れで部活にも、というひとが多かったので――同じ空間にいても、ダイレクトに関わる機会はそれまであまりなかったのですね。
ただ、雰囲気についてはとてもよく覚えておりまして。
終始和やかで、思った以上に「いい子」だと感じ、そして私の作品に惚れてくれたとか文芸部に入りたいとかも、けっして嘘ではないことがわかりました。
途中までは保健室の先生も同席してうんうんと頷いてましたが、やがて大丈夫だと判断してくださったのでしょう。「じゃ、まあ仲よくね」みたいなことを言い残し、立ち上がり、保健室のデスクでのお仕事に戻られました。
私は中学生っていうのは自分自身の出身中学の精神的荒廃ぶりもあり、もっととんがった、ガラスのように脆いくせに、ちょっとでも自分が傷ついたらこっちの腕をガッと容赦なく脅しとして突き刺すみたいな――そんな感じを、想像していました。
だから、この女の子がもうほんとにきらきらとこっちを見つめてくれることに、いっそ奇跡的な感慨さえも、覚えていました。
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