66:思えば、彼のむつかしいところはあのときにも表出してたんです。
どうして、動じなかったのでしょうか。
ただの先輩であるはずの、それも女子が、名前で呼びたいと言ってきたとき。
彼はどうして、あんなにもいつも通りに私に接してくれたのでしょうか。
それは、いまともに暮らしていても思います。
これはあくまで、たとえば、なのですが。
私のほうも、これでけっこう愛想がよく、感情的に動かないようにしているつもりで、いつもにこにこしてるなんて評価をいただけるくらいなのですが、
なんというか。彼のそれは、レベルも違えばそもそもの格も違う、といいますか。
私がいっぱいいっぱいで駄目になっているときでも。
それに巻き込まれたりせず、動じない。すくなくとも、そう見えます。
ただ私が隣にいてときに胸がつまるほどつらいのは、彼はそういうのがとにかく完璧だってことなんです。
それも、本人が望んでいるかいないかさえ、わかりません。というのはつまり、彼がそういうのを取り繕いたくて取り繕ってるというよりは――彼は最初から、そういう気持ちを外界にぶつけないという前提があるように見えるんですね。
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